入札日の数日前の時点で我々の相場観はかなり確立できているという自信がありました。そこでB社に我々の相場分析を丹念に説明し、B社と我々の連合軍の入札価格をいくらに設定するか相談しました。

B社は検討の上入札日の前々日に価格を提示してきましたが、我々が想定して伝えた落札価格のレンジのほぼ中央値でした。中央値ですからある程度の数量は落札できるとは思いましたが、正直B社が最初に依頼してきた大量落札、在庫一掃はできないのではと思いました。そこでB社に連絡して、こう切り出しました。

「我々が徹底的に収集した情報は競合他社よりも厚みがあるはずで、そこからはじき出した落札価格の予想はかなりの精度があると自信を持っています。その情報を御社に駆け引きをせずに包み隠さずお伝えしました。

正直御社が提示してきた価格だとそこそこの数量は落札できるとは思いますが、大量落札とは行かないでしょう。ついてはお伺いしたいのですが、御社は今回の入札で何トン落札できれば満足なのかお教え頂けませんか? 」

それに対するB社の回答は予想よりも大きな数量で、発表されている入札数量全体の80%以上を落札しないと到達しないレベルでした。我々は部内で相談し、B社の当初の提示価格より1トン当たり20ドル安い価格が必要と考え、B社に伝えました。

「価格維持にこだわるか、数量を取りにいくかどちらかです。どちらにしますか?」と判断をB社に委ねました。

その結果B社は価格を15ドル下げてきました。我々は「それなら何とかなるかな」と納得し、念には念を入れて、B社のオファーを数百トン単位に小分けにして数ドル刻みの価格差をつけて応札しました。

結果は大成功で全体の90%程度を落札することができ、B社に大変感謝されました。これをきっかけにB社との関係はより深まり、いろいろなビジネスを展開することができました。

この成功の背景にあるのは情報収集の厚みとそれを生かした予想の精度の高さだったと思います。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 ⽇本⼈の交渉のやり⽅』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。