高齢期の幸福について―健康、お金、親子関係……

幸福な高齢者と、そうでない人の違いとは?

「老いの工学研究所」では、二〇一三年に高齢者の幸福感について調査を行いました。その調査では、現在の幸福感だけでなく、四〇歳代からの人生を振り返って、各年代の幸福感についても点数をつけてもらいました。結果は次の[図表1]の通りです。

写真を拡大 [図表1]各年代の幸福感

「幸福感が高い」の欄は、現在の幸福感を八〇点以上とした人の平均点です。幸福感の高い人の平均点は現在が九一・九点ですが、四〇歳代のときは七五・九点で、そこから徐々に上昇していっています。「加齢のパラドクス」通りのことが見て取れます。

一方の「幸福感が低い」は、現在の幸福感を八〇点未満とした人たちの平均です。幸福感が低い人たちの平均は現在が五八・五点。四〇歳代のときが六六・〇点でした。歳を重ねても幸福感が上がっていかず、現在の幸福感は四〇歳代の頃よりもやや低くなっています。また、四〇歳代時点で「今、幸福感が高い人」と「今、幸福感が低い人」の幸福感の差は九・九点ですが、年代が上がるとともにその差が開いていっていることが分かります。

なぜでしょうか。

幸福感は主観的なものですから、今、幸福に感じている人が今と比較して「昔は苦労した、大変だった」と考えがちで低い点になっているのかもしれませんし、今、幸福感の低い人が「昔のほうが良かった」と考えて高い点になっているのかもしれません。いやもっとシンプルに、「健康面や経済的側面の差は、歳をとればとるほど差が広がっていくものだ」とも考えられます。

そうかもしれませんが、高齢期の幸福感の差は「その人の高齢期における活動状況や、物事の捉え方や考え方に大きく左右されるのではないか」とも考えられます。