では、苦手とするl、rの聞き分けを含めどうやってリスニングスキルを鍛えるかという話になりますが、量と質の2つを追求する必要があります。ここで、先ほどの赤ちゃんの言葉の学び方がヒントになっていくわけです。

リスニング学習では、「とにかく聞いて耳を慣らす」というように考える人が多くいます。これは間違いではありません。

1000時間以上の量が必要なのも、赤ちゃんは言葉を覚えるために必要な音声を取捨選択し、その処理を正確に行わないといけないことからデータがいっぱい必要になるので、時間も相応にかかるからです。ですので、一定の量については確保していきましょう。

ただ、聞き流すだけでは正直リスニング力のアップは大幅には難しいかもしれません。これが聞きたいという意識や何をテーマに聞き取るか、学習の意図を明確にすることが大事です。

赤ちゃんは言葉を無意識に聞き流しているのではありません。自分もコミュニケーションを言葉でとるために、親や周りの人が話すことを理解しようとしているのです。

要するに、英語リスニングの理論的なねらいは、音の違いを聞き分けてlやrなどの重要な違いをより敏感に区別して聞き取りができるようになり、それを言葉に発する段階までもっていくということです。

従って、無目的に聞いてるだけでは学習の効果は緩やかなのですよね。さらに、量に加えて大事なキーワードがここで登場します。

質も確保するために「シャドーイング」などでうまい人の発音を聞いてまねていきましょう。シャドーイングとは、英語の音声を聞きながらあとを追うようにまねをして発音する学習方法です。

私も渡英後にシャドーイングを盛り込んでからは学習の質がやはり変わりました。上手い人をお手本にしてまねていくと、上達も経験値の積み重ねと相まって早くなります。聞くことも大事ですが、これを音に出して発することで記憶に残り、自分の発音の質の向上が図れるわけです。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『電車で学ぶ英会話』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。