珍獣との出会い

下戸で飲んべーが苦手なおばちゃんがなぜに今の旦那と一緒になったのか?

……それは正直に申し上げます。

はい!! おばちゃんはその時、ただ、ただあせっていた。その一言でございます。

と言うのも、おばちゃんの娘時代は、今では完全に死語になっている「結婚適齢期」というものが存在していたのでございます。

「男なんていらない! 私達は永遠に不滅よ! 仲良くしようね〜!」

なんて言ってた親友も、好きな相手ができるとさっさと嫁に行ってしまい、おばちゃんは相当追いつめられていたんだと思う。

「もうこうなったら人間として生きているならどんなのでもいいや!!」

そんなやけっぱちな状態のおばちゃんはとんでもない禁じ手を使ってしまった。

当時、父の飲食店を手伝っていたおばちゃんは、手っ取り早く、店の客から結婚相手を選ぶ事にしたのだ!

当時のおばちゃんは『店の看板娘』おばちゃんめあてのお客さんだってけっこういたんだから。その中で都合のいい相手をさがす事にしたおばちゃんはある活きのいい兄ちゃんにめぼしをつけた。

今でこそくそがつくよなじい様だけど、当時はイケメンさんだったのよ。

「よし! こいつを釣ろう!!」

と心に決めた。なんたってうちは魚料理専門店。魚だって人間だって糸さえ垂らせば一本釣りくらいできるじゃない、そう心に決めたおばちゃんはそれからはもうれつにアタックの日々。

当時、その活きのいい兄ちゃんは、常連さんがたまに連れてくる同僚の一人。なので、月に数回訪れるだけ。

一本釣りを決めたおばちゃんは、店の扉があいてお客さんが入ってくるたび、活きのいい兄ちゃんではないかと、全神経が扉に向かった状態で他のお客さんなどうわの空。まじに大物を狙う大間のマグロ漁師状態!!

二十五才の一年間はほぼマグロ漁師に徹した一年間だったのだ。

そんなこんなでその活きのいい兄ちゃんが来店した時は、それはもう押せ押せのおばちゃんは、完全にのぼせ上がっていたので、

「なんとか結婚までたどりつきたい」

一心で飲んべーとは距離を置くという下戸のプライドを、その時は完全にぬぐい去っていた。

そして、とんとんと話が進んで、めでたく今の旦那である活きのいい兄ちゃんと一緒になれたおばちゃんは、

「この人も結局、私をめあてにうちの店に来てたんじゃん!」

とタカをくくっていたが、後日とんでもない事実を知る事になる。

当時、会社員だった旦那は、昼間は仕事に行き、夜は父の店を手伝っていたが、いつの間にか調理師の免許を取ってしまった。

理由は、昔から調理人になりたかった旦那は、若い頃飲食店でバイトしたり、自分で料理したりする事が好きだったそうだ。でも実家の両親の

「そんなやくざな商売はダメだ!」

という反対で、泣く泣く今の仕事をしていたが、いつか機会があれば、調理の仕事につきたいと思っていたところ、ちょうど都合のいい飲食店の娘である私が目の前に現れたというのだ。