PART3

2019年4月

Mikeという男がわたしにLINEしてきた。

Mikeいわく僕はシリアの軍でドクターとして任務してる。ウイルソンはシリアを逃げた。ウイルソンは自分のパスポートとIDカードとノートパソコンをシリアに忘れていった。

ウイルソンが忘れていったパソコンのデータからフロンベルクの写真とフロンベルクのLINE IDを見つけた。

さっき、ウイルソンから僕に彼の新しいLINE IDが送られてきた。ウイルソンはフロンベルクに彼の新しいLINE IDを送ってほしいと僕に頼んできた。ウイルソンにLINEしてあげてほしい。

Mikeは続けた。

フロンベルクがウイルソンと一緒にいると、あなたにリスクがかかるかもしれない。でもウイルソンはフロンベルクに逢いたくてシリアを逃げたんだよ!

来月僕たちドクター全員シリアからアメリカに引き上げる。ウイルソンを助けてやってください。

Mikeが教えてくれたウイルソンの新しいLINE IDに早速LINEした。LINEした時、ウイルソンは病院に入院していた。彼はその経緯をわたしに話してくれた。

Brianから借りた$3,000を使い果たしてからは、空港で2週間飲まず食わずで過ごした。気がついたら病院の中だった。ウイルソンは胸の痛みに苦しんでいた。こんなに痛いなら死んだ方がいい。シリアから逃げた時のストレスから来る痛みだと。

彼は続けた。

僕の手元には治療費の保証金もわずかなお金も無いから、ドクターは僕を十分に診てくれない。病院長は僕に院長の口座を教えた。誰か振り込んでくれる人がいたらこの口座に振り込むようにと。

ウイルソンは少しでもいいから治療費の保証金を振り込んでほしいとわたしに頼んできた。

わたしはすぐに治療費の保証金として$700(約7万円)を振り込んだ。

ウイルソンはLINEの電話の向こうで泣いてた。嬉しかったと。

この時、銀行員のあのアドバイスがわたしの頭から遠退いた。これまでわたしが見てきたウイルソンの様子。ウイルソンから伝わる状況を判断する限り彼を信じられる。

彼が詐欺師だとしたら芝居が上手過ぎる。もしウイルソンが詐欺師ならここまでわたしを騙してこれほどわたしを良い気分にさせてくれる騙されてもいいよ……

ウイルソンから報告がきた。