来訪者 PART2

2019年3月わたしは東京にいた。

ウイルソンはわたしが東京にいることを知って、彼は東京に行きたいと言ってきた。シリアを出たい。

シリアから東京までは近い。フロンベルクと東京で会ったらアメリカに一緒に帰ろう。フロンベルクと東京で会ったらシリアにはもう戻らない。

ウイルソンは事前にShipping Nation(船会社)の船長と交渉して、わたしが費用を払うと伝えていたらしい。

Shipping Nationからわたし宛にメールが届いた。振込先はみそら銀行。東京までの船賃が50万円。その内訳は乗船費用と燃料費。

その時銀行員のアドバイスが、わたしの頭を過(よ)ぎった。

――知らない人に100ドルたりとて振り込まないほうがいい。

ウイルソンから頼まれた荷物。まだわたしの所に届いてない。荷物の運送料金は1月に、とっくに振り込んだのに。

わたしはその要求を無視した。

ロサンゼルスには日本時間4月1日に戻った。アメリカ時間同日、わたしはロサンゼルスに着いた。

そして同日4月1日、ウイルソンからシリアを脱出したと知らされた。ウイルソンはシリアからトルコのイスタンブールにたどり着いた。

彼がわたしに伝えてきたのは、イスタンブールに着いた時、友達のBrian Davisから$3,000を借りたこと。今はイスタンブールのホテルに宿泊していること。

それから10日後くらいにウイルソンはわたしに少しばかりのお金を送ってほしいと伝えてきた。

彼はホテルに数日泊まって食事してお金を使い切った。Brianに再度お金を貸してほしいとメールを出したけど返事は来ない。手元には一銭も残ってない。iPhoneの電源ももうすぐ切れる。お金が必要とのこと。

銀行員のアドバイスがまた頭を過ぎった。わたしはウイルソンの要求を無視した。ウイルソンは諦めたのか、その時はじめて自らLINE IDを消して、わたしから去った。

もうわたしからは彼に連絡するのは不可能。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『愛の対価―the dance of blind love―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。