「あ、これは」

思わず叫んだ。写真には、男女がそれぞれ二人ずつ四人写っていた。一人は智子、その隣には井上、そして、今写真を渡してくれた女、もう一人の男はわからない。どこかの宴席のようだ。酒を飲めない智子が赤い顔をしている。もう一人の男は、この女の肩に手を置いている。二枚目の写真も同じようなアングルだった。

「一年ぐらい前の写真です……捨ててしまうつもりだったんですが、たまたま今日ご主人に逢えたので、お渡しします」

「……」

「何か、お気にさわってしまいましたら、すみません、処分してください」と言いながら、その水商売風の女が帰って行った。どうして、智子と井上の写真があるのだろうか。それにあの女も写っている。キッチンのテーブルの上に写真をのせて、達郎は考え込んだ。

そして、その質問はさっきの女に尋ねるのが最良だと思い、急いで部屋を飛び出した。隣を見ると、既に女が鍵をかけていた。

「すみません、この写真のことで、ちょっと、お話をうかがえませんか……」

「え、ええ、でも、あなたに話していいことかどうか……」

「ぜひ、聞かせてください」

「……話を聞いてしまって、後で私を怒ったりしませんか」

「絶対にしませんよ」

「それじゃ……」

女は達郎の申し出を了承しそうだった。達郎は、自分の部屋で話がしたかったが、相手が多少警戒しているようだったので、近くの喫茶店にでもと提案し、部屋に戻って財布を取った。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『店長はどこだ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。