ある学校の初任教師用ハンドブックに記された授業パターンの例を紹介しよう。

1.導入(5~10分)

ウォームアップ、授業の雰囲気づくり、既習内容の確認、本時の学習内容(授業の目的、扱う題材、習得する技能)と学習目標(履修項目、達成目標、評価内容)の確認

2.展開

(1)教師による説明(10~15分)

教師:学習内容と達成目標を伝える。活動のモデルを示す。質問する。

生徒:説明を聞く。メモをとる。質問に答える。指示を確認する。

(2)全体学習(10~15分)

教師:やりとりしながら指示を与える。生徒と一緒に活動する。生徒の理解を確認する。

生徒:質問したり、質問に答えたりする。教師やクラスメートと一緒にやってみる。

(3)個別学習(20分~)

教師:フィードバックを与える。評価する。理解の度合いを確認する。机間巡視してアドバイスする。

生徒:個人あるいは小グループで活動する。理解したことを発表する。学習したこと、さらに学習すべきことを確認する。

3.まとめ

振り返りと評価ディスカッションやディベート、プレゼンテーションも盛んで、小学生のうちから取り入れられている。

覚えるより考えることを重視

教師は、「What do you think?(どう思うか)」「Why do you think so?(なぜそう思うのか)」という質問をよくする。正解を問うのではなく、生徒の考えを聞く。さらに、考えに至った経緯や、なぜそのように考えたのかと理由も聞く。

教師の質問は発想を広げるようなものが多い。知識そのものよりも、知識を得る方法に重点が置かれた授業が多い。知識は生徒が自分の力で得るものなのだ。ただし、知識を得ることは暗記することではない。オーストラリアの生徒が暗記する姿はほとんど目にしたことがない。日本の生徒が使っている暗記用の透明シートやペンも見たことがない。

教師も「覚えなさい(Remember)」とは言わず、ひたすら生徒に考えさせる。勉強のしかたやわからないときの対処法も教える。わからないことはどんどん言わせ、恥ずかしいことだと思わせない。そして、どうすればわかるようになるかアドバイスする。答えは言わずに自分で考えさせる。知識を詰め込む教育方法は過去のものになりつつある。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。