「お前達の考える常識と私が考える常識と全然大差はない。違うように感じるのは、私に対して嫌悪の気持ちがあるからだ」

「あなたの今までの行動が、あなたに対して嫌悪の気持ちにさせる原因なのだと、まだ理解していないみたいですね」

「もう離婚しているから、何を言われても気にならないが、私がすべて悪い訳ではない。お前達にも悪いところがあった。しかし、葬儀場でこんな会話をするのも非常識だから、これ以上は言わないでおく」

それを聞いて、雄二は元父親を殴ろうとして接近するのを、姉夫婦の夫が必死になって止めた。その様子を見た元夫がまた話し始めた。

「雄二の今、行おうとした行動が、私の言った意味を非常によく表している!」

そう言って自家用車に向かって少し歩き始めてから、急に振り返り私に接近してこう言った。

「ところで、直美の遺産相続の手続きはいつ話し合いをするのだ? 元父親の私にも、もらえる権利があるのだから、勝手に手続きを進行させないでもらいたいね!」

それを聞いて、私は怒った口調で言った。

「今、やっと娘の葬儀が終了したばかりで、金銭に関する話し合いがすぐに出来る訳がないじゃありませんか。準備が出来たらこちらから連絡します。今日はもう帰ってください!」

その返答を聞いてから、元夫は急いで帰宅していった。その状況を全部見ていた姉の明美は、私にこう言ってきた。

「ひろみ、あなたはどうしてあんな男と結婚したの? 雄二ちゃんが怒るのも理解できるし、直美ちゃんがもし生きていたら、自分が一生懸命に貯めた命のお金をあんな元父親に取られるのが我慢できないでしょうね。そして現状のひろみは冷静な状態ではないわ。きっと遺産の話し合いの時も同じ状態になりそうだから、遺産相続の手続きに関して私もあなた達の話し合いに立ち会ってあげる」

こうして本葬の日に起きた出来事がすべて終了した。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『娘からの相続および愛人と息子の相続の結末』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。