柔軟なカリキュラム

実施方法は学校ごとに違う

オーストラリアン・カリキュラムは全国共通だが、日本の学習指導要領のような「縛り」はなく、運用は州に委ねられている。教科ごとに、学習目標や履修内容(知識、理解、技能)、達成基準、授業時数が示されているが、あくまでも目安。各州はこれをもとにガイドラインを作成しているが、ガイドラインも運用は緩やかで、学校や教師に委ねられる部分が大きい。

授業時数に幅を持たせたり、複数の学年を跨いで学習することも可能にしたりして、学校や生徒の実態に合わせた柔軟な対応ができるようになっている。学校を取り巻く環境、生徒の特性や家庭環境、学習意欲、興味関心などは地域、学校、個人によってすべて異なり、一律に実施するのは不合理だからだ。

教科学習は、オーストラリアン・カリキュラムの8領域を中心に行われるが、複数の領域を統合したり、学校のニーズに合わせた科目を独自に設定したりすることもできる。だから、教科名が学校によって違うことはよくある。初等教育は、8領域を必修科目として履修する。

前期中等教育は、必修科目の他に選択科目も設定される。後期中等教育は、ほとんどが選択科目で、それぞれの生徒が進路や興味関心に応じて選択する。設定される科目は、法律、経済、ビジネス、会計、化学、生物、物理、農業、建築、インテリアデザイン、コンピュータ、環境、歴史、宗教、スポーツ、文学、パフォーミングアーツ、ホスピタリティー(宿泊や飲食など接客サービスを提供する業種)、服飾、栄養、先住民、外国語など数多くある。

日本の大学の教養科目レベルの学習が行われることもある。検定教科書はなく、使用する教科書、教材はすべて教師が自由に決める。教科書を使わず、自らが作成したプリントだけで授業をする教師も多い。教え方も自由だ。

教師が一方的に話す授業はほとんどなく、最初に一斉指導したあと、個別あるいはグループで課題に取り組むという流れが多い。ディスカッションもよく行われる。生徒は概して自分の意見をよく言う。生徒自身が課題を見つけ、探求する学習が多い。生徒中心の学習が主流で、教師はファシリテーター(進行役)の役割を果たす。

日本で、学習指導要領の「逸脱」ということがよく言われるが、オーストラリアではほとんど耳にしない。教育の自由度が大きいオーストラリアでは、カリキュラムの「逸脱」という概念がないように思う。ただし、自由度が大きい分、教師には高い力量と責任が求められることになる。