授業が終わると生徒はすぐ帰る

静まり返る放課後の学校

日本の学校は、授業が終わっても生徒がたくさん残っている。部活動や委員会活動があるからだ。放課後の教室で友達と過ごす生徒もいる。「用のない生徒は早く帰りましょう」という校内放送も聞き流しておしゃべりを続ける生徒たち。学校が放課後の生徒の居場所になっている例は少なくない。

オーストラリアの学校には部活動がない。委員会活動もほとんどない。帰りのホームルームや掃除もやらない。授業が終わると生徒は一斉に下校する。迎えに来た保護者の車やスクールバスに乗り込み、さっといなくなるので、あっという間に校内は静まり返る。そして、生徒が帰ると先生も帰る。

生徒は掃除をしない「オーストラリアの学校はどうしてこんなにごみが多いのだろう」と思うことがある。特に、放課後はあちこちにごみが散乱している。地面に落ちたパンくずをアイビス(トキの仲間でオーストラリアではよく見られる)がついばんでいる。屋外に食べ物が散らかっているのは外で飲食するからだろう。

写真を拡大 [図表1] 食べ物をついばむアイビス

汚したら、掃除をしてきれいにすればよい。でも、オーストラリアの生徒は掃除をしない。誰が掃除をするかというと、クリーナーとかジャニターと呼ばれる清掃員の人たちだ。早朝や夕方、大きな機械を使ってごみを集めている。

生徒が掃除をしないのは、彼らの仕事を奪うことになるからだと言う人がいる。子どもに掃除をさせるなんてとんでもないと言う人もいる。トイレの掃除などあり得ないそうだ。

日本に来たオーストラリアの中学生を、勤務先の学校に案内したことがある。いちばん興味を持ったのが、放課後の掃除だった。学校で掃除をするのは初めてだと言っていた。和帚を珍しがっていた。雑巾掛けも楽しそうにやっていた。トイレを掃除する生徒たちを見て目を丸くしていた。

前にも述べたが、オーストラリアの生徒は日本の生徒よりごみに無頓着な気がする。教師もそれほど厳しく言わない。もちろん、日本でもごみを投げ捨てる生徒はいる。だが、見つかれば注意される。日本の先生はごみにはとてもうるさい。だから生徒はごみを散らかすことはいけないことだとわかっている。

オーストラリアでは、ごみの投げ捨てをいけないことだと思う生徒が少ないように見える。ごみが落ちていても気にする様子があまりない。落ちているごみを拾う生徒も見たことがない。自分たちが汚しても、清掃員がきれいにしてくれるという意識がどこかにあるのだろうか。役割分担の意識だが、私には何となく違和感がある。諸外国の中には日本の学校の清掃活動に注目する国があるようだ。でも、オーストラリアでは議論にもならない。