第一章 二人の少年

第二話 牧場の少年

この国は、南米(なんべい)大陸(たいりく)の中央にある。

ガルシア夫人コンスエラの牧場があるのは、首都から南東に遠く離れた草原だ。夫が三年前に病気で亡くなり、夫人はこの牧場の主人となった。牧場ではたくさんの肉牛を飼っていたので、牛の世話や牧場の手入れなど、毎日が重労働(じゅうろうどう)だった。しかし、夫人は夫の残したこの牧場が大好きで、仕事をつらいと思ったことは一度もなかった。

使用人たちも夫人を助け、大変な仕事は進んでやってくれた。夫人はスペイン人の血を引く家系に生まれ、背はすらりと高く、()い茶色の目をしていた。いつも着ている地味(じみ)な仕事着ですら夫人が着ると美しく見えた。

牧場の入り口を入ってしばらく行くと、真っ白な(かべ)と黄色い屋根を持つガルシア夫人の大きな家が、青い空に美しく(かがや)いていた。草原の上には使用人たちの家が並び、朝日に照らされた家々の景色は、美しい絵はがきのようだった。

コンスエラの一人むすこカルロスは、六歳になったばかりだった。カルロスの父が亡くなった後、家族はコンスエラとカルロスと夫の母の三人となった。

そのカルロスの祖母は、イタリア生まれだった。祖母は孫のカルロスをかわいがって、自分の知っているヨーロッパの国々のことを、口ぐせのように何度も話してくれたが、今から半年前に亡くなった。

ガルシア牧場は、となりの牧場まで四十キロも離れているような所なので、カルロスには同じ年ごろの友達はいなかった。使用人たちは、カルロスをかわいがってくれたし、中でも若いフェルナンドは一番の仲良しだったが、仕事があるので毎日カルロスと遊ぶというわけにはいかなかった。

その代わりに、親戚のミランダ家から来たロットワイラーのメスの子犬が遊び友達だった。