明らかになったアルツハイマー病発症の原因

認知症の薬としては、進行を抑えるものはありますが、残念ながら根本的に治療する薬はいまだにありません。現在使われている治療薬は、いうなれば弱った細胞にムチを打つようなもので、症状は一時的に良くなるものの、病気の進行をかろうじて食い止めるにすぎません。

認知症の中でも代表的なアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は、なんらかの原因で変性した異常なタンパク質(アミロイドβ)が脳内に蓄積されることで発症することがわかってきました。

タンパク質とは、アミノ酸という分子がペプチド結合と呼ばれる結合でつながっている大きな分子です。アミノ酸には、グルタミン酸、アラニン、リジンなど20もの種類があり、タンパク質はこれらのアミノ酸が紐状につながってできていて、それが正しく折りたたまれることで正しい立体構造になり、多種多様な機能を発揮するようになっています。イメージとしては、紐(ひも)が規則的に絡み合っている感じです。

それが、なんらかの異変があって紐が正しく折りたたまれず、異常な絡まり方をしてしまうと、規則的な立体構造が変化して本来の機能を果たせなくなることがあります。そして、その異常な絡まり方をして変質してしまったタンパク質が蓄積されると身体に害を及ぼすこともあります。

アルツハイマー病は、まさに変な絡まり方をしてしまった「アミロイドβ」というタンパク質が脳内に蓄積されることで発症します。

「アミロイドβ」は、脳が活動したときに発生する老廃物の一種で、ノンレム睡眠(脳も体も眠っている状態)の間に脳内からの排出が活発に行われるという性質を持っています。

ですから、中途覚醒(夜中に目が覚める)などでノンレム睡眠の時間が確保できないと、アミロイドβの蓄積が進みますので、当然アルツハイマー型認知症の発症リスクは高まります。