翌日の月曜日から達郎は、いつもの通り出勤した。

傷害致死とはいえ、人を殺してしまったことに、大きな後悔があったが、これから開けていく自分の将来を考えた場合、私がやりましたと、おいそれと自首するわけにはいかなかった。

亭主に対する裏切りと他人の女房を寝取った罪の償いとして、まずは二人とも天に命を捧げ、そして、次に俺の将来を支援するのだ。達郎は、そう考えていた。

ただ、いつ自分に捜査の手が延びてくるか不安でならなかった。

しかし、井上が智子との関係を極秘にしていれば、ここまで警察はやって来ないだろう、と思った。

この日の夜も、テレビのチャンネルを切り替えられるだけの、ありったけのニュースを見た。が、金沢の殺人事件の続報を伝えているものは一つしかなかった。それも、嬉しいことに目撃者や手がかりがなく、捜査は難航しそうだと言っていた。

それを聞いて達郎は、ほくそ笑んだ。

殺人事件なんて、毎日全国でいくつも発生している。いちいち捜査に進展がなければ、ニュースにならないから、マスコミも取り上げたりしない。

達郎は事件の迷宮入りを願った。

その願い通り、日が経つにつれて、新聞もテレビも事件の続報を全くといっていいほど、報じなくなった。

事件から二週間が経過した時、達郎は、念のため大阪の中央図書館に行って、石川県地方の地方紙を事件発生の翌日の第一報の記事にさかのぼって、検証した。

すると、二つの地方紙とも、初めこそ事件を大きく取り上げてはいたが、その後は全国紙やテレビと同様に、続報は尻つぼみとなり、一週間を経過した頃からは、全く掲載されていなかった。

なおかつ、両紙とも真相究明には時間がかかりそうだと分析していた。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『店長はどこだ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。