ロータリーの効用

ロータリーの数ある逸話のなかに次のような話がある。あるロータリアンが死期にあるとき、それを悲観する妻にこう声を掛けた……。

「妻よ、私が死んでも何も心配はいらない。クラブの仲間たちに相談すればすべてを解決してくれる……」

年齢、性別、国籍、宗教、経済などの諸要素とは関係なく付き合える仲間、その集合体がロータリーだ。できるだけ若い頃から参加して、諸先輩と付き合い、徐々にその仲間となって、クラブの指導者になっていく。

その後、クラブを超えて地区に顔を出すようになり、クラブでは得られないさらに広範囲の仲間を作っていく。考えるとなんて楽しいクラブだろうか。老若男女、誰もが楽しめるクラブ、それがロータリーだ。こう考えて僕は六○年余生きてきたが、最近、尊敬する故・前原勝樹パストガバナー※28の書かれた文章を読む機会があり、目から鱗が落ちる思いがした。

28:過去にガバナーを経験したことのある人。過去にクラブ会長を経験したことのある人は「パスト会長」と呼んでいる。

前原氏の書かれたポール・ハリスの逸話を紹介する文章には、「ポール・ハリスは自分の創ったシカゴ・ロータリークラブの例会に出席すると童心に戻ることが出来る、と言っておりました。ある先輩は例会の一時間は神様になる時間である、とも言われました。それはロータリーの例会には競争者はおりません。警戒する人物もおりません。

その理由は職業分類によって一人一業ということであるので同業者はおらず、目上の人も、家来も子分もおりません。競争心も警戒心もなくなった時、人間はその本性を取り戻して善意が溢れてくるのです。

即ち、ロータリーの例会は、その職業業務の忙しさにかまけ、緊張の連続のために善意を発散出来にくい実業家、専門家の埋もれたその善意を発掘し、高揚し沸き上がった善意に奉仕という方向づけを成し、これを実践に移す勇気を与えるのを目的とした会合です。もし、善意というものを抜きにしたら全くロータリーとしての特色を失ってしまうことになります」※29とあった。

29:前原勝樹パストガバナーのガバナー当時の公式訪問での挨拶文から抜粋した。