私はクロードを愛している。いや、私たちは真剣に愛し合っている。でも、だからと言ってそんな旅行が許されるものでないことくらいカミーユにもよくわかっていた。

だから今は自分の本心を、二人の関係を両親に打ち明けてしまうわけにはいかない。シャイイへは行かなければならない。自分の感情は別としても、クロードがあれだけ夢中になっている構想を実現させてあげなければ。

そのためにカミーユは、優しい両親に噓をつかなければならない。一体、どんな噓を?

いつもは長く感じられる帰り道が、今日はあっという間だった。帰宅すると、母に、帰り道の間中、ずっと考え続けてきた噓をついた。

「あのね、お針子仲間のダニエラとローズがバカンスに出掛けないかっていうの。フォンテーヌブローの森の近くにシャイイっていう村があるんだけど、素晴らしい景色なんですって。私たちのお小遣いでも泊まれるような安宿があってね、二週間くらいゆっくりしてこようって」

「あら、お店の方は、そんなに一度にお針子たちが休んでも大丈夫なの?」

当然の疑問だ。

「う、うん、お金持ちのお客様たちは皆さん、もうバカンスでしょう。パリを離れてしまうから夏の間は少しお店も暇なのよ」

その時期には少し早過ぎるとカミーユ自身も思ったが、自分で稼ぐようになった娘のバカンス計画に、母もそれ以上の異論は差し挟まなかった。

むしろ、仲良しの友達との旅行を実現させてあげたいという親心さえ感じられた。

母シモーヌのいつもと変わらない優しい笑顔を眺めながら、胸は鈍く長く痛んだ。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『 マダム・モネの肖像[文庫改訂版]』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。