中学二年になる直前の四月、悲劇が起きた。

なじみ慕っていたフリースクールの女性施設長が殺害されるという事件が起きたのだ。A子は終日落ち込んで部屋にこもって泣いた。その際現れたメンタルフレンドの一人は左腕をリストカットしていた。

A子はまもなく再開されたフリースクールに再び通いはじめた。

中二の秋、母親に反抗する出来事が起きた。高校進学を控え、焦る母親はせめて修学旅行だけでも参加させようと説得したが、彼女は頑として受け入れなかった。

母親と「行く、行かない」を繰り返す中、A子自身がインフルエンザに罹患し結果的に行かずに済んだ。このことが契機となり、自己主張を口にするようになった。

次第に反抗的になり、母親から

「高校どうするの?」

と聞かれても、

「いいから、黙っていて!」

と反発した。

母子げんかで一週間、口をきかないので母自身が「言い過ぎた」と折れたこともあった。自己主張を始めた娘に困惑する母親に、自己主張の大切さを伝え、親を恐れず言い返せてこそ、仲間とも対等に言い合えるようになると伝え、母親を励まし続けた。

中学二年の二月、学校からの働きかけもあり、初めてパソコン教室に参加できた。もともとパソコン操作と絵画は得意だったからすんなり行くことが出来た。

以来、担任とのやりとりを通じ「学校に行く」と決断し、週一、二回のペースで登校を開始した。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『爆走小児科医の人生雑記帳』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。