そこで、J・ハンセン(1988年に米議会で初めて地球温暖化を証言した人物)たちは最近、この問題にまったく異なる方面から切り込んでみせました。現在と未来の気候状態をコンピュータを使って、モデル化するかわりに、(私が疑問に思ったのと同じ問題意識で)太古の気候と各気候間の変遷状況にむしろ着目し、その二酸化炭素濃度の変化と、地球の平均気温の変化の相関関係を割り出そうとしました。

それによりますと、二酸化炭素濃度と気温の関係はすべて非線形的というのではなく、少なくとも、氷河作用が最もきつい時期(氷河が南極だけでなく、北半球の大半もおおっていた時期)と、はるかに暖かい時期(実質的に世界に氷はなく、海面レベルは今より150メートル前後高かった時期)の範囲内においては、一種の線形性が見られたということです。つまり、地球の気候が安定していた期間は線形、二酸化炭素濃度と気温は比例しているということです。

その範囲ならどこを取っても、大気中の二酸化炭素の量が倍増すると、速効性フィードバックによる温暖化で気温が3度上昇し、また遅効性フィードバックよる温暖化でさらに3度の上昇が見られるというのです。ということは、IPCCの目標値「2度以内」をなんとか達成したと喜んでいたら、たとえば、2世代先、孫の代になって、さらに2度上昇してしまったということが起きるということです。

しかし、太古の例では、大気中の二酸化炭素濃度の変化は総じて、火山活動とか岩石の風化作用など地質学的現象によって生じており、しかもその変化は、現在の人為的な変化に比べて、何百倍も何千倍もゆっくり進行しているので、速効性フィードバックによる温暖化がどれくらい時間がかかるのか、遅効性フィードバックによる変化が生じるにはどれくらい時間がかかるのか、推計はできなかったとのことです。

ハンセンたちは、次のような主張もしています。3500万年前の氷のなかった世界で、南極の氷床がゼロから成長し始めたとき(氷が張り始めたとき)、当時の二酸化炭素濃度は425ppm(誤差はプラス・マイナス75ppm)でしたので)逆に、もし、今後、大気中の二酸化炭素濃度が上昇し425ppm(プラス・マイナス75ppm)に達したときが、南極の最後の氷が解け始める時期であると推測しています。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『「グローバル・サンシャイン計画」で防ぐ劇症型地球温暖化』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。