さて、子どもから目が離れる、子どもに目が行き届かなくなる瞬間は、普通の成長段階にもあります。それは、子どもの居場所が変わるとき。進級、進学するときですね。

子どもと大人の距離感や見方が変わるときなので、大きな転機となります。

小一プロブレム

幼稚園は、私立のほうが国公立より二倍多いのに、小学校は国公立が私立の九十倍多いので、公立小学校が、たくさんの私立、国公立の幼稚園、保育園等から、様々な教育を受けた子どもたちを受け入れることになります。

そこで、「小一プロブレム」という問題が発生します。幼稚園、保育園等の教育は、内容もレベルも様々です。思いついたとおりに動き回り、とても自由に育てられた子もいれば、まずきちんといすに座ることを教えられた子もいます。

漢字の読み書きまで教わっている子もいれば、あまり勉強をしたことがない子も入ってきます。前転や側転のできる子もいれば、歩けばこける子もいます。

ずっと親の目が行き届いていた子、正しい自由保育で伸び伸びと育てられた子、ぎゅうぎゅう詰めの保育所で生き抜いた子、テレビとゲームしか遊び相手のいなかった子……。

これだけ多様なタイプの子どもが集まってきているのに、親御さんから、子どもを一人一人(それまでの家庭内でのように)見てほしいといわれても、対応しきれるものではありません。

つまり、小一プロブレムは、まったく異なった多様な教育を受けた子たちが、全部いっしょになって入ってくること、そして、入学前に別々の、ところによっては強烈な教育を受けてきたために、小学校のルールに馴染むまで時間がかかることに原因があると考えられます。

お母さん方から見たら、せっかく良かれと思って幼稚園や保育園や習い事の教室でレベルを上げてきたのに、そのまま高まっていかず、むしろそれが元で問題が発生してしまうわけです。

もし、スキルを保ち続けたいならば、その習い事を続けるしかありません。でも、今度は時間の融通が利かなくなります。一方で小学校の側から見ると、集団生活には、お互いが納得するルールが必要です。

しかし、学校が提示するルールに何人かの親御さんが納得いかないと言い出すと、これはもう崩壊するしかなくなります。せめて、全員がいすに座って、先生の指示を聞いてから行動するというだけでも、状況は変わるかもしれませんが。

では、家庭には何ができるでしょうか?

できることと言えば、まず小学校を選ぶことです。

みなさんの身の回りにも、荒れる小学校と荒れない小学校があると思います。公立でも荒れないところは荒れません。そして、私立・国立はまず荒れません。

可能なら、そういうところを選ぶといいでしょう。学校を選んで入れると協力する気持ちになるので、荒れは起こりにくいのです。

私立や国立の小学校には教育環境を守る手立てがあるので、荒れない小学校を望むなら私立や国立のほうがいいと思います。そうでなければ、学校が荒れていても大丈夫なように、小学校一年生一学期の勉強を先取り学習しておくことをお勧めします。

でも、先生の目が行き届かない状況では、いい教育を期待することは難しくなります。

ある程度、覚悟が必要かもしれません。