応募したのは、花嫁衣装の貸衣装店で、ハワイでの海外挙式の業務を始めるためのスタッフ募集ということだった。衣装の直しなど必要かもと思い、趣味程度の裁縫をも特技として書いた。

その上、別紙を、履歴書に挟み込んだ。その用紙には、ワープロ打ちで入社の意欲を書いた。とにかく目に留まるようにだけはしておこうと下手な戦略を立てた。

筆記試験の日、会場には五人程度の募集に対して七十人を超える女性が集まった。新卒の女子学生もたくさんいて、やはり女性には厳しい就職戦線のようだった。

ところが試験会場になっていたその会社の店舗に入った時、人生経験の少ない若い女性たちは感じなかったかもしれないが、四十六歳の自分には感じる就職先としての違和感があった。

それはその会社の体質にある独特の臭いと言えようか。結婚衣装店の女性社員の制服は、普通、花嫁を引き立てるために、目立たない色のはずだと思っていたが、その店では真っ赤なジャケットに金ボタンで、まるで水商売のようだと感じた。

また、リーゼントで黒いスーツの男性社員が店内をうろうろしていた。この会社は反社会的な資質ではないのか。仕事はほしいが、合格してもここで働けるだろうか。

あれこれ考えをめぐらしていたが、とりあえずは合格を目指してみようとだけ決めて、試験に向かった。英語の筆記試験はハワイの現地企業との挙式に関する業務契約書の日本語訳が問題だった。

幸か不幸か、十名の一次試験合格者の中に残った。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『乙女椿の咲くころ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。