おかんはいかにしてサッカーコーチになったのか?

審判が足りないことに気がついた~Kコーチのメール~ 

──チームの審判が足りません。地域のサッカー大会・フットサル大会に出るときは、原則、1試合ゲームをやったら、その都度、後審をチームから出さなければなりません。

でもご存知の通り、コーチの人数が限られるなかでギリギリの人数で采配しているのが現状です。そこで保護者の皆さんにお願いです。審判の講習を受けて、審判を引き受けてください。審判講習の費用はチームからお支払いいたします──

このメールがどれだけの保護者の心に響いたかはわかりませんが、少なくともお節介おばさんで親バカ一番を自認するおかんの心にはストレートに響きました。

何が響いたかと言うと、審判が足りないことは頭ですぐにわかったのですが、それよりも選手のために保護者たちに頭を下げるKコーチの姿勢に心を打たれたのです。

おかんの周りには、いろいろと優れた人がたくさんいて、どちらかと言えば社会的には成功しているけれどいろいろ悩んでいる、という場面をよく目にします。

そして、これは自分にも当てはまるんだけれど、「助けて」を言えないことが事態を打開できない理由の一つだったりします。

大人になると「助けて」ってなかなか言えない。プライドが許さない。人に頭下げるのも何だか癪にさわるし、それで断られてバカにされて変な噂でも立てられようものなら立ち直れない、というのが実際のところでしょうか。

おかんは、自身のことについては、なかなか「助けて」が言えないけれど、子どものことについては、もう何度も何度も人に頭を下げて教えを請うてきました。それができないとうまく暮らしていけないと思ったから。

知り合いも親戚も全然いないところに、体の弱い子どもを連れて引っ越してきたので。でも、「助けて」を言うには勇気がいるって痛いほどわかるのです。

それをメールで保護者全員に伝えてくれたKコーチの姿勢が、おかんの背中を押しました。

早速このメールを夫に見せて、

「審判が足りないんだって。一緒に審判講習受けようよ。この間の試合でもTコーチしかいなくて、一人で監督と審判やっていたよ。そこは、親として何とかしてあげたいじゃない。あなたと私と二人で審判資格を取れば、どっちかが試合の日に用事が入ってもどっちかは審判できるじゃない?」

と夫を誘いました。

夫は若い頃、草サッカーをやっていたこともあったので、すぐ事情を飲み込んで快諾してくれました。こうして、おかんがまずフットサルの審判講習を受けることにしたのです。

なぜ、夫だけに受けさせなかったのかって? 普通、ママが一緒に受けることないだろう?

それは、おかんはスポーツが好きだからです! そして、親バカだから夫だけに任せきりになんてできない!

息子のためにできることは、おかんが納得いくように進めたい。息子に偉そうなこと言うなら自分自身も努力したい。息子が試合に出られる環境を整備してあげたい。

息子がお世話になっているチームだから、そのチームを大切にしたい。これが、おかんの審判としてのスタートでした。

Kコーチが保護者にあててお願いのメールを出さなければ、おかんがしゃしゃり出て審判になることはなかったと思います。おかんは審判になったことで、自分をより好きになって、8年前の自分からは想像がつかないほど良い年のとり方をしてきたと思っていま
す。

あのときのKコーチのメールは、ある意味、おかんの人生の舵を大きく切った運命的なものでした。

いまでも、Kコーチとあのときのメールに感謝しています。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『グリーンカード “おかんコーチ”のサッカーと審判日記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。