教育の責任は州にある

オーストラリアは6つの州と1つの準州、首都直轄区(以下、州)から成る連邦制の国だ。1901年に連邦が成立したあとも植民地時代の流れを引き継ぎ、州の自治権が強く、多くの権限が州政府にある。学校教育も州が管轄している。だから制度は州ごとに違う。国レベルで教育を管轄するのは連邦教育省だが、各州にも教育省があり、学校教育行政は州の責任で実施されている。

だが、近年はそうした州ごとの違いをできるだけ少なくし、全国的に教育の質を向上させようという動きが活発になっている。1980年代の終わりから10年おきに発表される全国学校教育目標もその一つだ。

現在の目標は2019年の「アリス・スプリングス宣言」に示されており、「卓越性と公正さ」を追求し、「自信に満ちた創造的な個人、成果を収めた学習者、活動的で知識豊かなコミュニティの一員」を育成することが目標として掲げられている。

そして、目標を達成するには子どもたちの学力向上が必須とされ、全国共通のカリキュラム(以下、オーストラリアン・カリキュラム)や全国統一の学力調査(National Assessment Program:Literacyand Numeracy:NAPLAN)などによりそれを実現しようとしている。

オーストラリアの教育制度

就学前教育は、日本と同じように幼稚園や保育所などで行われる。幼保一体化し、教育と福祉の両面を併せ持っているので、仕事をしていない親でも子どもを保育所に入れることができる。費用はまちまちだが数は十分あり、施設を選ばなければほぼ誰でも入園できる。日本のような待機児童の問題を耳にすることはない。

学校教育は5、6歳から始まる。でも、就学開始年齢になったらすぐに入学しなければならないかというとそうではない。子どもの成長には個人差がある。入学には早過ぎると保護者が判断したら、入学を遅らせることも可能だ。就学通知が届いたり、就学時健診が集団で行われたりすることもない。就学開始年齢の基準日は州によって異なるので、州が違うと同じ学年でも半年近い年齢差が生じることがある。

ちなみに、2018年度は、ニューサウスウェールズ州が7月31日、タスマニア州が1月1日、ビクトリア州と首都直轄区が4月30日、クイーンズランド州と西オーストラリア州と北部準州が6月30日、南オーストラリア州が5月1日となっていた。クイーンズランド州は少し前まで12月を基準にしていたので、タスマニア州とは1年近い差があった。小学生の1年差は大きいと思う。