限界だと、蓮は思った。今回の件で、有花は離婚をする以前に不倫をしていたという事実が証明された。更に、有花の不倫相手との間に生まれた子どもが、蓮だという事も。

有花に対する苛立ち、憎しみ、怒り。そして本当の父親は別にいるという真実。

不倫をしていた父親。

不倫をして俺を生んだ母親。

血の繋がった父親。

血の繋がっていない父親。

俺を育ててくれた父親。

俺を育てず、自分に脈々と流れ続ける血を引き継いだだけの、どこの誰かも分からぬ父親。

俺の本当の親は誰なのか?

本当の親って一体何なんだ

俺は何のために生まれてきたんだ

俺は誰のために生きているのか

俺は一体何者なんだ

誰でもいいから教えてくれよ

蓮は、全てに対して疲れ果ててしまった。これ以上、大人のまやかしに振り回されるのはごめんだ。嘘をつかれて生きていくのもごめんだ。

それでも蓮は、家に帰っては、普段通りに何も知らぬフリをして過ごすしかなかった。おふくろがこの件について話すつもりがないのなら、永遠に自分から話をする事など何もない。頑なにそう決めつけた。

蓮にのしかかる重圧は、限界を超えていた。いつ自分が自分でなくなるのか、分からなかった。この世から自分が消えても、誰も悲しみはしないだろう。

いやむしろ、自分が消える事によって、自分をここまで苦しめた人間全てを地獄に落としてやる。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『愛は楔に打たれ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。