母は高校社会科教員だった。見栄っ張りで自慢が好きで直ぐに偏見を持つ母だった。しかし、そんな母でも構わなかった。母の愛情が得られなくて、亜紀の反抗期はひどいものだった。どれだけ母の愛が必要なのかを見せつけた。

亜紀は、男に頼る母に耐え切れなかった。兄の目を通してしか母を見ていなかった亜紀には真の愛情が分からなかった。

それにも関わらず、学校では、亜紀は、中学三年の二学期までは人気者だった。しかし、自分に甘く他人に厳しい要領良く世の中を渡って行く友達に上手い具合に馬鹿にされて心の病に罹患していった。

亜紀は、富山県では有名大学合格を誇るトップ級の高校を受験できる成績を取っていた。ただ、自分自身に自信が持てないので、ワンランク下の桜が丘高校に行く、と偽っていた。

本当は、富山県でトップ級の泉中央高校に行きたかった。そうでなくても、行くことが可能なら、内申書を重視する園田高校に入りたかった。

担任の先生も母も、園田高校に入れる亜紀に、何も情報を知らせなかった。このことが、亜紀に破綻を来した。

中学時代の友人は他人に厳しく当たり、亜紀とは違って上手いこと泉中央高校に受かって行った。園田高校にも、自分よりも成績の悪かった友達が受かった。亜紀は、がっくりと肩を落としてため息をついた。

「あーあ、何で、こんなことになったのだろう」

亜紀は、桜が丘高校に受かってから、園田高校に入れたことを知った。友人が、園田高校に受かり、情報が漏れて来たからだ。

亜紀は、後悔した。

「園田高校に行けば良かった。どうして、誰も情報を教えてくれなかったのだろう」

疑問が浮かんだ。

亜紀は、嫌々、桜が丘高校に通うことにした。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『ひまわり変奏曲』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。