第一章 社会は変わる、変わるから新しい時代となる

時代の変化を掴むコツ

当時を振り返ってみますと私は昭和四十年代の日本社会が直面している課題を「察知」し、これから日本が向かう方向を「予知」し、不動産鑑定士になっただけです。

このことから、時代を読むには、まず社会が発する悲鳴、迷いを感じる「察知力」が必要であり、次にこれから社会が正常化へ進むべき道筋がわかる「予知力」があれば、それですべて事が足ります。

時代を読むには察知力と予知力が欠かせません。察知力と予知力とよく似た意味に、点検と予防があります。たとえば新幹線や飛行機の運行には機体の点検と整備が付きものですが、「察知力と予知力」「点検と予防」この二つは一見すると似たような響きがあります。

しかし二つには何の関係、脈絡もありません。飛行機の場合、整備士は飛行前の点検で故障に気づけば、異常部分の修理を行い、場合によれば会社に飛行中止の要請を行います。またパイロットが飛行中に飛行機の異常に気づいた場合、近くの空港に緊急避難を実行し、事故を未然に防ぐようにするものです。

整備士やパイロットは、日常での的確な点検、運行で異常を察知し、これから先の危険を予防します。しかし、時代の異常は従来のマニュアル通りの点検ではラチがあきません。

これから到来する時代も新しく、未知のものです。

時代の変化、社会の悲鳴には察知力が必要となります。時代の変化を読む察知力は、いつもと同じ的確な点検作業でなく、常に「冷静で一人になる視点」が必要になります。

たとえば部屋の異変、異臭は皆と同じ部屋にいて、同じ雰囲気、同じ空気を吸っていたのでは気づかないものです。異変は一人になって社会を見る、冷静な視点が欠かせません。

同じように、来るべき時代の予知力も過去は繰り返すとする容易な視点では新しい時代を予見できるものではありません。人は、生き苦しい社会に耐えることが出来ず、新しい空気を必要とするものです。

察知力は、「停滞した社会は行き詰まる」、そして予知力は「異常な社会は必ず新しい社会に移行する」とごく当たり前の考え、素直な視点が必要です。

私の体験から察知力と予知力を説明しますと、当時の日本は、国や地方、さらに国民の多くが不動産に狂騒しているにも係らず土地評価体制が整備されておらず、トラブルが多発していました。

私は素直な心で人々の悲鳴を聞き(察知力)、日本は新しい正常な社会に必ず移行すると考え、私が不動産鑑定士になれば社会、人のために貢献できる(予知力)、との思いで不動産鑑定士になっただけです。

新しい時代を読むコツ(察知力)は、過去の視点でなく、一人になって冷静に人々の悲鳴を聞き、社会は必ず新しい社会に脱皮するものだと考え、新しい時代になれば、「私は社会の役に立つ」とする素直な心構えがあれば、新しい時代への予知力が付くものです。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『特性を活かして生きる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。