・交渉をスケジュールに沿って進めるための工夫

さて、スケジュールを策定しても交渉は相手があってのことなので必ずしもその通り進むものではありません。特に海外との交渉は思い通りに行かないことの方が多いと言わざるを得ません。

そこで、諸々の工夫が必要になってきます。本件でも海外のサッカー協会に我々が選考した候補者を推薦しても他にも候補者がいないのか? だとか、候補者を面接のために連れてきてほしいなどと言われることもあります。

あるいはもともと日本よりものんびり時間が流れている国が多いので、推薦した候補者を受け入れるかどうかの返答も、契約条件の提示に対しての返答もすこぶる遅いのです。そこで先方協会交渉担当者である専務理事さんに早く返事をもらえるようにあらゆる手段を尽くしていました。

具体的にはまずSNSで先方の携帯に、候補者が決まったら履歴書を添付して送付。返事は数日後にくれるように要請。候補者の履歴書に対するオーケーをもらったら、用意していた契約書案をメールで送付すると同時にSNSで契約書案を送った旨先方の携帯にメッセージを入れる。2~3日、遅くとも4~5日後の回答を要請等々です。

こうして契約書案に対する一次回答を受け取ってからもSNS、メール、国際電話、国際WEB会議などあらゆる手段を駆使して早期の交渉妥結を目指していました。この例では先方協会との交渉期限を1月初旬に設定し、危機感を持って交渉のスケジュールをコントロールしていました。

読者の皆さんに気をつけて頂きたいのですが、このように取り巻く諸環境、社内の事情などから交渉のデッドラインがほぼ決まっていることが多いものです。

それにもかかわらず、そのデッドラインまでの過程を甘く見ていた結果、最後に大慌てをし、追い詰められて交渉において不利な条件を飲まされてしまうということが起こりがちです。スケジュールの進捗管理において油断は禁物なのです。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 ⽇本⼈の交渉のやり⽅』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。