大学院時代に会社説明会に参加したことのある矢崎総業は、内定者の中から希望者に対し1年間「アドベンチャースクール」という海外武者修行制度を実施していて、語学力だけでなく現地の異文化理解や人間力、想像力などを鍛えて海外でもたくましくやり取りできる人材を育てているのは画期的なことだと感じます。

また大学では、秋田の国際教養大学や早稲田大学の国際教養学部などが英語による授業を展開し、1年間の海外留学を必須とするといった海外での経験や語学に多く触れる機会を設けて国際社会で戦える人材を育てるという、海外の大学で行っているようなカリキュラムを実践するところが出てきました。

他にも明治大学や法政大学、近畿大学、京都産業大学などの有名大学でも国際関係の学部が新設されており、学生の外国語習得による社会人としての基礎力アップが一つのトレンドになりつつあります。

この趨勢は、何も社会人や高等教育の分野に限ったことではありません。中等教育、さらには初等教育の面でも外国語能力向上に対しての取り組みは着実に進んでいます。

ですが、聞く・話すのオーラル面も含めた総合的な力は、短期的なスパンで一気には上がりません。国家レベルでの語学力の底上げについては、まだまだ時間を要しそうです。

初等、中等教育における転換点

外国語教育に対する改革は公立学校でもとりわけ重視されています。

中学校、高校での英語教育は、従前は読む・書くが重視される傾向にありましたが、最近は聞く・話す・読む・書くの4技能をバランスよく習得することが求められることから、授業の内容もリスニングやスピーキングを織り込んだものが増えるようになってきました。

今年から実施された大学入学共通テストでは、リスニングの配点の割合が、20%から50%と旧センター試験よりも高くなって、聞く・話すというオーラル面の技能がより重要性を増していることがうかがえます。

公立高校入試のリスニングの配点も現在は20%から30%を占めている地域がほとんどですが、将来的にこの割合については高くなっていく可能性があると私は思います。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『電車で学ぶ英会話』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。