2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

3 教育原理

「教育原理」の勉強の工夫

二科目目の「教育原理」では、「教育」の基礎を学ぶ。「保育原理」と同じくこの科目は基本であり、手堅く合格する必要がある。この科目では、日本の教育に関する法律や規定である教育基本法や学校教育法、学習指導要領、幼稚園教育要領などをきちんと理解しているか問われる。

そして海外の教育、特に子どもへの教育の歴史とその先駆者たちについて、また日本における教育制度や学校制度についても出題されるので、正しく回答できるように理解する。この教育の歴史は「保育原理」と重なる部分があるので助かる。現代の教育現場で起きている暴力行為・少年非行・いじめ・不登校・引きこもり・学級崩壊についても問われる。

このように保育所では直接関係ない内容も出題されるが、それにこだわらずにしっかり勉強しよう。「教育原理」も集中して勉強すれば、取りこぼす科目ではないだろう。

教育の重要性

「教育原理」とはなにか。三省堂 大辞林辞書によると、「教育原理とは教育活動の基本的な原則の検討や教育実践の分析を通して、教育の本質の理解を深める研究、およびそれに基づく講義」とある。

前章にて「保育」とは、「養護」と「教育」であると定義した。では「教育」とは何か。教育の単語Education は、ラテン語のEducare(外に引き出す)が語源と言われる。つまり、教育とは、「人の中に潜在している才能や能力を外に引き出す」ことと言える。

したがって、保育における教育とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である。特に、乳幼児期の教育の重要性が説かれている。(保育所保育指針の第三章、保育の内容)

またドイツの哲学者カントは、「人間は教育される唯一の動物である」「人間は教育によってはじめて人間になることができる」と述べ、人間の発達に占める教育の役割の大きさを説いている。

教育に関する法律・規定とは何か

教育に関する日本の法律や規定は、憲法、教育基本法、学校教育法、幼稚園教育要領、学習指導要領、保育所保育指針などがある。教育原理では、これらの教育に関する法律や規定について勉強していくが、意外と知らないことが多く、自分自身、教育についての知識を整理するのに大いに役立った。

改めて確認しながら、ポイントを見ていこう。

■日本国憲法の第二六条:教育の基本の法律で、国民が教育を受ける権利と教育を受けさせる義務を規定している。(一九四六年制定)皆教育と義務教育の無償を規定している。

「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。②すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」

■教育基本法:日本の教育や教育制度のあり方を定めた法律である。(一九四七年制定)

「我々日本国民は、(中略)個人の尊厳を重んじ、心理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する」

■学校教育法:各学校の設置基準、入学資格、修業年限などを規定する。(一九四七年制定)

ここで言う学校とは、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学および高等専門学校とする」と定義している。

■幼稚園教育要領:幼稚園の教育課程や保育内容の基準を定めた規定する。(一九五六年制定)

「幼児期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、幼稚園教育は、学校教育法第二二条に規定する目的を達成するため、幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うものである」

また幼稚園での教育週数は、年間三九週を下回ってはならず、一日の教育時間は四時間を標準とする。幼稚園は教育機関であり、養護という概念はない。幼稚園教育要領では、ねらいと内容が示され、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の五領域が定められている。

■学習指導要領:文部科学大臣が、子どもの発達にあわせてどの教科をどのように指導するかという教育課程の基準を現したもので、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の教育内容や学習事項の学年別配当、授業時間を含む。(一九四七年に文部省が制定、その後改訂を繰り返す)。
 

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。