もちろん支出した寄付金には、税制上の各種特典も認められている。この事業については、以下のような特徴がある。

(1)日本のロータリークラブは約二二五○あるが、その中の約八五○のクラブが割り当てられた留学生の支援を担当する。このクラブを「世話クラブ」という。

(2)世話クラブでは、受け入れた留学生の相談役となる会員を決め、その会員は一年または二年間、その役を務めることになる。このロータリアンを「カウンセラー」という。

(3)米山奨学生であった留学生は、大学、大学院を卒業後は「学友会」(22)という組織に入り後輩の支援をする。22:現在、国内に三三ヶ所、国外に九ヶ所(台湾、韓国、中国、タイ、ネパール、モンゴル、スリランカ、マレーシア、ミャンマー)の学友会がある。

僕は、これまで地区の米山記念奨学委員会委員長を三年間務めたことがある。いわゆる「米山よねやま」(ロータリアンはこの事業をこう略称する)を知るいい機会になった。

米山は、ロータリーの行う事業のなかで最も分かり易い事業だと思う。事業の内容は簡単だ。ⅰ私費、ⅱ外国人、ⅲ留学生という基礎資格を前提に、ⅳ前年度の地区の寄付総額で決まる奨学生数(23)、ⅴ指定校制度(24)、ⅵ地区米山委員会による選考(書類選考と面接選考)の構成の中から、次年度の奨学生が決定する。

23:年間約八五○人の奨学生の配分は地区全体の前年度の寄付額実績を第一の基準とする。

24:地区内の留学生を抱える各大学に対し、地区から次年度の奨学生の推薦枠を伝えて、各大学はその範囲内で学内の被推薦留学生を決定する。

その後は、地区内のどこのクラブに世話クラブになってもらうか、その中のどの会員にカウンセラーになってもらうかを、自薦他薦を交えて選考する。クラブ側からもどの奨学生がいいか、国別、性別、大学別などの希望が提示され、いくつかの組み合わせの中からベスト・マッチングが決定していく。

四月の新学年度から、実際の奨学金給付が開始する。奨学生たちは毎月、世話クラブの第一例会に出席し、例会時間中に会員に対し近況報告をして、その月の奨学金を受け取る。この一時間でクラブ会員との交流が生まれ、その後さまざまなクラブ行事に参加して、母国と日本との文化や慣習の違いを体験していく。

日本のお父さん・お母さんに相当するカウンセラーとの交流も濃密だ。休日には、近くの観光地にカウンセラーの家族と行楽に出かける。食事会に呼ばれ日本の食事を楽しむ。進学や就職の相談をすればカウンセラーは真摯にそれに応え、クラブのメンバーや地区の米山委員と一緒にそれに対応する。まさに一人の子供の親代わりのような存在になる。

卒業後、彼らは学友会に所属し、相互の連絡を続けながら交流は継続する。