それから1ヶ月もしない間に、直美は手続きを終了させて薬師の姓を名乗り始めた。

その効果だろうか、直美は以前と比べてだんだん笑顔が多く見られるようになったなと感じた。雄二はそんな直美を見ながら、言葉には出さないけど早く自分も改名したい気持ちが強くなっていった。そして、月日が経過して雄二も成人になった時、1ヶ月も経過しない間に名前を薬師雄二に改名した。

そして、その半年後に私の母親が老衰の為に死亡した。まるで、私達3人の改名を見届ける事が出来たから、死亡したようなタイミングだった。葬儀の時に棺桶の中をのぞき込んでみると、自分の人生を後悔することがなかったような死に顔をしていたので、私達3人は心の中で本当に感謝しながら墓に納骨するまで見届けたのだった。

それから後、直美は看護師になって同じ病院に勤務していた男性と結婚して、男性の実家に嫁ぎ、また改名して新しい生活を始めたのだが、自分達の子供を授かる事ができなかったのと、旦那さんが違う病院に勤務していた女性看護師と不貞行為をしていたのが発覚したので、直美は旦那さんをどうしても許すことができなかった。そのあと、離婚して慰謝料をもらってから再び、私の実家である姉夫婦の家に戻ってきたのだった。

雄二は大学を卒業した後、地元の有名和菓子店に就職して職人として修業しながら、25才の時に高校時代の同級生と結婚した。そして、30才の時に自分名義の持ち家を購入したのを機に、私と直美は雄二夫婦の家に引っ越して家族4人で生活を始めたのだった。その後、雄二夫婦は不妊治療を続けて40才の時に1人の男児を授かり雄二は父親になった。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『娘からの相続および愛人と息子の相続の結末』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。