離婚

私は改名の話は後日、改めて話し合う事にして、今日は元夫と離婚ができた事に感謝した。

日付も変わり離婚が成立した後、初めて平日が仕事休みの日に戸籍等の改名をするため市役所に行き、改名の手続きを終了してから銀行や運転免許センターなど、いろんな場所を訪問しては、さまざまな書類に必要事項を記入して新しくなった戸籍抄本を提出して、改名手続きをして回った。

自分が考えていた以上に手続きする回数が多かったのには驚いたが、今日中に絶対終わらせないといけなかったので、自分で自分を励ましながら頑張った。そして、自分の職場の人事部に改名の手続きに行った時には、いろんな質問をされたが正直に理由を答えて実家に戻った。

到着すると母がテレビを見ていたので、直美が薬師の姓に改名したがっているが、私はどう対応すればいいのか、本人がいないのを確認してから相談してみた。

「お母さん、直美が薬師の姓に改名したがっているけどどう思う?」

それを聞いて少し時間が経過した後で、私を諭すように話し始めた。

「直美ちゃんが赤羽の姓を名乗りたくないのは、自分が嫌っている元父親の遺伝子が自分の中に半分、死ぬまで残ってしまう事実を認めたくないからよ。さらに、その事実だけで戸籍も世間も、そしてひろみからも親子として扱われてしまう。その事が直美ちゃんも多分、雄二ちゃんも精神的苦痛になってしまっているのだろうね。だから、本人達は自分で変更する事が許されている薬師の姓を名乗りたいのだと思うわ。本人が変えたいと思っているならば、そのとおりにさせてあげなさい!」

私は母の言葉を聞いて納得した。確かに、私から子供達を見れば必ず元夫とは実の親子だと無意識に考えてそのように扱ってしまう。他人も同様な扱いをするのが自然だ。だけど、子供達にしてみたら、その事が今までいろんな苦痛を体験させられた記憶を思い出させるトラウマとなっているのにやっと気がついたのだから。

そして、母の言葉を聞いたその夜、私は子供達を集めてこう言った。

「直美、薬師に改名をしたいのなら手続きをしなさい。私もできる事は手伝ってあげる。雄二は未成年だから現在は改名できないけれど、成人になって改名できるようになったら薬師の姓に改名する手続きをしてもいいわ」

子供達は、私に感謝の言葉を伝え握手してきた。直美は涙を流して喜び、雄二はそんな姉を励ました。