経営の神様・稲盛和夫氏も「物事を成就させ、人生を充実させていくために必要不可欠なことは『勤勉』です。すなわち懸命に働くこと。まじめに一生懸命に仕事に打ち込むこと。そのような勤勉を通じて人間は、精神的な豊かさや人格的な深みも獲得していくのです」(※15)と説いている。

ロータリーの「職業奉仕」理念に通じる考え方だと思われる。

ヘッセ(※16)がいう「各人にとって本当の天職とは、自分自身に達するというただ一言あるのみだ」は、職業は本人にとって自らの倫理律を順守する誓いであることをいい、内村鑑三も「人生にとって一番の幸福とは何か? それは自分の天職を知ってこれを実行に移すことである」(鈴木範久著『内村鑑三日録─天職に生きる─』教文社 一九九四年)として、「日々の職務を忠実に実行するなかで、徐々に天から自分に与えられた使命が何であるかが見えてくること、それゆえ人生の本当の目的は『天職』を見つける旅路であるのだ」と示唆している。

シェルドンの講話に有名な「靴屋」の話がある。

「世界中の靴屋が一ヶ所に集まる。靴の製造器具とともに集まる。それが突然の天災で全部無くなったら、世界の人々は裸足で歩くことになる。そのとき社会は、靴屋さんが如何に世の中のために役立っているか、職業を通じたサービス(相手のためになる行為)をしているかが判るだろう」(※17)

手許にある文献では、職業奉仕を次のように説明している。

「…職業とは一応は生活の糧を得るための利潤の追求を目的としています。しかし職業は実は人間が社会生活を営むために必要な業務を分担することであり、その報酬として利潤が与えられるのです。

…ロータリアンは全部職業人ですから、職業奉仕こそはロータリアンの基本的生活態度であるといえましょう。

…職業奉仕の概念は『ロータリーの目的』の第二項に示されています。

即ちそこには、①職業の道徳的水準を高めること、②有用な職業はすべてその価値を認めること、③各ロータリアンの職業を社会奉仕の一つの機会として品位あらしめること、の三点が挙げられていて、職業奉仕とは『職業の道徳性と品位を高め、その価値を認めること』が主目的であると思われます」(※18)

職業奉仕について、その意味を明確に定義することは、かくも難しいことだと思い知らされた。

自らの不勉強を嘆くばかりだ。