過去に起きた地球温暖化と生物大量絶滅

生物の大量絶滅は温室効果ガスによるものだった生物が大きくなって肉眼でみえる顕生代けんせいだい(5.4億年前から)には、古生代と中生代の5.4億年前、4.5億年前、3.5億年前、2.5億年前、2億年前、6500万年前に計6回の生物の大量絶滅が起きていました。

たとえば、2.5億年前の古生代・中生代境界(P-T境界)で起きた生物の大量絶滅について述べますと、西シベリアで起こった地球史上最大の噴火が発端でした。

炭素の重量に換算して1万1000ギガトン(11兆トン。1ギガトン=10億トン。この排出量に注目してください)の二酸化炭素が放出され、地球は最高で4~5度の温暖化に見舞われたと見積もられ、これが地球上の生物を絶滅に追い込む引き金になったと考えられています。

西シベリアの巨大噴火をきっかけに地球温暖化が始まると、さらにそれを加速する要因が加わりました。海や川、湖から発生する水蒸気の量が増えたのです。前述しましたように水蒸気も、二酸化炭素を上回る温室効果の高いガスです。こうして、地球はさらなる温暖化に突き進んでいきました。

この温暖化によって、シベリアの永久凍土に存在していた膨大なメタンや深海底のメタンハイドレートが解け始めました。メタンハイドレートはメタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている物質で、低温かつ高圧である環境においてのみ存在できるもので深海底にあります。メタンは二酸化炭素よりはるかに大きな温室効果を持つものですから、地球の温暖化はますます進んでいきました。

ついに、これらの温室効果ガスがもたらした超高温の大気が、海洋の大循環を停止させてしまいました。

通常の海には、極付近から冷たい水が沈み、赤道付近で上昇する海水を大循環させる深層海流のベルトコンベアのような仕組みがあり、それによって世界の海をかき回していますが、これらの温室効果ガスが押し進めた超高温化によって、沈み込む冷水がなくなり、この海のベルトコンベアが停止してしまったのです。

海の大循環が停止すると、酸素を豊富に含んだ海面付近の水が海中へと向かわなくなりました。また、海水の温度が、最終的には平均で6~7度も上昇したため(深海底まで温度が高くなるまでには何千年もかかるようです)、海水に対する酸素の溶解度が下がってしまいました(一般に液体の温度が上がるとそこに溶け込む気体の量は減少します)。

こうした一連の出来事が、海中の深刻な酸素欠乏を生み出し、2億5000万年前のP-T境界層で96%の生物が10万年から20万年で死滅してしまいました。