三月二十三日(土)

元気にしてますか。メールしてすみません。今日、弁護士から連絡がありましたが、僕が帰ってきてほしいのは、景子です。話し合いたいです。今までのことをちゃんと謝って、改心して、一番大切な家庭を取り戻したいです。家族こそ、ほかの何よりも大切なものだと痛いほど悟りました。

仕事は役職を全部辞めて、元の平場で働いています。景子ちゃんが帰ってこなかったら、もう生きていても仕方ないと思っています。子どもたちもいなくなって、胃に穴が開くぐらいに毎日が苦しいです。会話と笑いがある普通の生活がしたいです。話をさせてください。僕が間違ってました。許してください。

三月二十五日(月)

今日も景子ちゃんがいなくて、気が変になりそうな苦しい一日でした。一緒にいる時に変な言い方をしてしまっていたけど、心の中では、別れたいなんて思ったことなんて一度もなかったよ。今も前と変わらず、心の中にいつも景子がいて、困った時は、(景子ちゃん、どうしようか)とか、しょっちゅう思ってる。

愛して結婚した、たった一人の景子ちゃんだから、一生その気持ちは変わらないからね。今、寂しくて死ぬほど辛い毎日です。

三月二十六日(火)

景子ちゃんがいない悲しみと寂しさが、日が経つごとに大きくなっています。苦しすぎて、もう耐えられないです。今は、縒りが戻ることだけを唯一の望みにして生きています。一緒になってから景子ちゃんのことが気にかからなかった時なんて一度もなかったんです。

あんなふうにふるまって、本当にごめんなさい。許してください。ごめんな、景子ちゃん。唯一の家族だから、絶対に家族を断ち切ってはいけないです。お願いです。やり直させてください。景子ちゃんを信じています。

代り映えのしない文章にも辟易(へきえき)するけれど、まったく女々(めめ)しいというか、なんというか……。それに、そもそも、「これが最後(のメール)になると思います」と、以前に自分で書いたことも守れない、そんな人が、「絶対」とか「力を合わせて」とか「信じる」、「信じろ」などと、どれだけたくさん書き送ってきたところで、何の説得力もないやん……。

こんな調子のメールが、この後もまだまだ、ずっと続くことになる。読むほうも疲れるけど、書くほうは、もっと大変だろうに。このエネルギーを、こんなふうになる前に、もっと家族に注いでくれたらよかったのになあ。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫 失格』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。