第2章 リズムメイク

1. 映像作品の土台となるリズムメイク

リズムメイクは映像表現において最も重要な技術

人間は心拍、呼吸、脳波、筋肉の収縮など、常に生体リズムを刻みながら生きています。これらの生体リズムと感覚器官を通して受ける外的リズム。

その内外のリズムが同調すると「引き込み現象」が発生し物事への集中力、没入感が増幅します。

日常生活においても起床時間、食事時間、運動時間などの生活リズムが一定していると体と脳の調子がよくなりますし、生活リズムを崩すと調子がわるくなります。

赤ちゃんが母親の心拍を聞いて落ち着いたり、ノリのいい音楽を聞くと興奮して思わず体を動かしたくなったりするのも、すべてリズムの影響です。

心地よいリズム=没入感・集中力の向上

リズムとは電車のレール

情報やストーリーなどの「伝えたいこと」が電車本体だとしたらリズムはレールの役割を果たします。どれだけ速くて豪華な電車でもレールがガタガタでは性能を十分に発揮できません。レールがしっかりしていれば鈍行電車でも快適に目的地にたどり着くことができます。

それと同様に映像のリズムがわるいと、没入状態にならず視聴意欲が減少し、最後まで視聴してもらうことができません。リズムのよい映像は内容に意味がなくても、撮影素材の質がわるくても、没入感を促し視聴者の目を釘づけにしてくれます。

[図1] リズムは内容よりも重要な土台

リズムのよい映像というとミュージックビデオ(MV)のようなテンポが速くオシャレな表現をイメージしていませんか?

MV のようなオシャレ映像に限らず、映画でもニュースでもセミナー撮影でも最初から最後まで通して見せる映像は、すべてリズムを意識しなければなりません。例外は防犯カメラのようにサーチして見ることが前提の映像くらいです。

映像を含め、音楽や演劇、舞踏などすべての時間芸術においてリズムは重要です。どれだけ内容が素晴らしくても最後まで見てもらわなければ意味がないからです。

もし、あなたが映像初心者で、これから魅力的な映像作品を作りたいと考えているのであれば、最優先で心掛けることは美しい撮影ができることでも、おもしろい企画を考えることでもありません。心地よいリズムメイクを実現するための知識、技術、センスを身につけることです。

映像においてリズムは内容よりも重要な土台であることを意識しましょう。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。