八月三日DP本社で、佐藤、山本、鴻池及び伊藤は、KDPの原田代表理事の帰任に伴って新たに韓国に代表理事副社長として赴任する高梨課長と打ち合わせを行った。

鴻池は、「皆さんと打ち合わせた結果、まず、売掛金の送金は約束通り、毎月月末に全額送金させるよう管理指導してほしい。次に、伊藤監査役並びに私が支援をするので、貸付金の返済計画を作成させてほしい。また、李社長の説明で、当初購入し工業用地に転用出来なかった土地五、六〇〇坪が現在どうなっているのか、当時の不動産売買契約書、土地登記簿謄本など確認して下さい。

伊藤監査役によれば、雪岳山観光開発の所有になっている可能性もあるようですが、事実関係を併せて確認願います。三番目に、九億ウォンの建屋、設備増強計画については、目論見書を作成させ、どうして必要なのか十分調査して報告してほしい。四番目に、昨年の決算書を見ると、交際費が突出している。削減を提案すると共に、毎月の予算管理を徹底願いたい。

五番目に、昨年のロイヤリティーが未入金になっている。早急に送金するように指導してほしい。六番目に、とにかく全ての案件決裁は、代表理事社長である李と、理事副社長高梨両名の承認の下に進め、李社長の独断を許さないよう願いたい。最後に、伊藤名義の預金通帳を管理し、二回に分けて当社に入金して下さい。入金名目は、私が別途検討します」

鴻池は、いつものように経理マンらしく律義に説明した。同席した取締役営業本部長の山本は、ディック本社から異動したが、ゴルフもうまく、趣味のタンゴや、ルンバ、ジャズなどの洋楽を歌わせたら玄人はだしだった。

佐藤は、ディックの山本を含む仲間三人とハワイでゴルフをした際、訪れたレストランで入っていたバンドにお願いして、山本がハワイアンと、タンゴの曲を一曲ずつ披露したのを思い出した。すると、彼は、お客全員の拍手に包まれ、アンコールに応えた。レストラン側は、精算時、TAX相当分をサービスして感謝の意を伝えた。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『破産宣告』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。