第1章 集いし者たち

ツー・サンズが故郷を出て2年、彼女は馬と共に、灼熱の砂漠を、険しい山脈を、曲がりくねった海浜を進み、大渓谷を越え、大河を渡り、そして、さまざまな人間模様を見た。

北米大陸の南部、ミシシッピーを訪れ、その光景を見た時、彼女は嘔吐した。白人地主たちが、各々が所有する黒人奴隷たちを戦わせていたのだ。黒人たちは、己の胸骨や鎖骨を折られ、目を抉られ、舌を噛み切られても、息が絶えるまで戦う。

それを物かげから見ていたツー・サンズは、やがて気づく。生き延びるためには勝利以外には道はない、ということを。

実際、負けた側はその場で瞬時に射殺されていた。勝った側はしばし称賛を受けるが、またすぐに鉄の足枷と手枷と口枷をつけられ、虚ろな目のままつながれる。勝者も敗者も、心は既に死んでいるのだ。

ツー・サンズは、いずれ彼らを救うことを固く決意した。彼女は、ティファナの街でも、信じ難い光景を見た。

スペイン人とインディアンの混血らしき集団がおり、男たちは農奴として、女たちは売春婦として扱われていた。彼らの瞳は、絶望と諦念に覆われ、そこには何の希望も感じられなかった。ツー・サンズはただの傍観者ながら、強い憤りを覚えた。

彼女の果てしなき放浪は続き、あらゆるインディアン部族と接触した。白人から好き勝手に振り回され、ほんのわずかなアルコールと引き換えに、広大な領土を取られる者。人の好意を信じ、何度でも幾らでも裏切られる者。襲撃を受け、愛する人たちを全て奪われた者。

いつしかツー・サンズはこう思うようになった。

「力なき正義は無力なり」

だが、その力とは何か、自問自答を繰り返す2年間の中、彼女が掴んだものは、疑心暗鬼と離合集散を繰り返す、各部族を結集させることであった。では、どうすれば結集させられるのか。

「百術は一誠に如かず」

どんな術策や名案があろうとも、それを語る者に誠意がなければ何も通じない。ツー・サンズの放浪の果ての結論は、そこにたどり着いた。そして、彼女が何よりも欲しているのは、それを共に体現する仲間であった。