私が生まれ変わるまで

〈九州へ〉1996年

数日たち、私も少しは落ち着いてきました。

夫は「別れたくない、申し訳なかった」と言います。しかし、私の気持ちはおさまりません。このまま私が引き下がれば、この問題はうやむやになる。何事もなかったかのような日常が戻ってくる。

こんなにひどいことをしておいて? 私は、市の無料法律相談に行きました。

そこで、弁護士さんが「気が済まないなら、調停を申し立ててはどうですか? そして相手の女性に慰謝料を請求すればいい。ご主人とは、もし別れるなら同様に請求してもいいと思います」と。

私はその足ですぐに家庭裁判所に出向き、調停を申し立てました。そして、しばらくして、Yのご両親から手紙が届きました。

そこには「あなたも知らない関係ではなかったのだから、あなたの監督不行き届きもあるのではないですか?」というようなことが書かれていました。

私も悪いと? そんなこと言うんだ……ふ~ん、何も知らないくせに。私もご両親に手紙を書きました。いままでの経緯を詳しく書きました。

彼らは会社のパソコンを使って連絡を取っていたこと、Yは毎日のようにうちに来て、私のつくった夕食を食べ、その後タバコを吸いながら我が物顔で大声で騒いでいたこと、それを妊婦の私が黙って我慢していたこと。

まさかこんなにお世話までしてきた子に、こんな裏切り行為をされるとは思ってもみなかったということを書きました。娘を一人残して地元に帰ったことは間違っていた。このように人さまに迷惑をかけるなら一緒に連れて帰って欲しかった。浅はかな行為であるということを。

そして、私は彼女のご両親に会うために、はるばる九州まで行きました。どうしても、私も悪いと言われたことには納得がいきませんでした。

なんと、夫は、

「俺も行く」

と言いました。浮気相手の親に、どんな顔をして会うというのか。まったく彼の考えはわかりませんでしたが、勝手にすればいいと思い、一緒に九州まで行きました。

Yのご両親は、会うなり私に、

「大変申し訳ないことをした。悪いのは、そこにいるご主人とうちの娘です」

と丁寧に頭を下げられました。

うちでそんなにお世話になっていたとは知らず、大変失礼な手紙を送ってしまったことを詫びられました。娘は会社を辞めさせ、こちらに引き取ります、慰謝料は私たちが支払います。本当に申し訳ないことをしましたと言われました。わざわざ行ったかいがありました。

会社でも二人のことは公になっており、当時所属していた課の課長さんに念書をつくっていただき、二人は金輪際会うことはしない、関係は解消するということを確認しました。これで一応の事態は終了しました。さて、残るは私たち夫婦の問題です。