平成6年頃から妻は会社を辞めて事務所を手伝ってくれるようになっていたが、身内ではない従業員の雇用をすることによって、始業時間や終業時間が明確となり、その時間内に一定の仕事を終わらせようと目標設定ができるため、仕事の効率向上にいいかもしれないと思った。

しかし、従業員の雇用となると一定の事務所の広さと充実した設備への投資が必要となる。開業当時は安物のスライド式で時間のかかるコピー機、事務所専用の電話機の設置はしておらず、自宅用の電話を電話兼FAXとして使用していた。

結局自宅を改修して事務所とし、設備投資を行うのであるが、費用は嵩み、実現するには数年かかった。これまで何度もお金や投資に対する話をしてきた。

「もううんざりだ」という人もいるだろう。しかし、何かを始めようとすると、どうしてもお金の問題が出てくる。

お金は生活していく上で、必要不可欠な存在であり、それがあるかどうかによって人の肉体的・精神的安定をもたらし、選択の幅を広げてくれるものだと考える。

平成10年3月に「有限会社レイバー」という経営労務コンサルを行う会社を設立した。

賃金体系や経営全体に及ぼす人件費の在り方について、指導を専門とする会社である。この会社を設立することによって、社労士として法律で定められている業務の範疇ではできない分野を行うことが可能になった。

士業の枠組みを超えて展開するには、有益だと考えていた。

当時、従業員を雇用する際に、社会保険労務士事務所は法人格を持つことができなかったため、社会保険や厚生年金の加入制度が無かった。

それでは優秀な従業員を雇用することができないので、法人格の取得は必要に迫られていた。

また、士業との区分を明確にすることで、業務の合理的推進を図ることができると考えた。