社労士受験決断

定年前になると、自分の体調、家族のことを真剣に考えなければいけない。人生百年時代。豊かに年を重ねる為には如何するか。

百歳までの定年後四十年、会社人生より長くなる。百歳を過ぎても、しっかりと自分の仕事や趣味または地域への貢献をしている人をテレビで見ることがある。自分はどうしたらいいのか。定年後の選択についての本が多く出回っており、駅前の本屋で立ち読みし、参考にした。

自分の専門性を生かしての「社会に貢献」そして「収入窓口の確保」……。

そんなフレーズが頭に残り、妻にそのことを説明し、相談した。日頃、業務で付き合いのある社労士業務のことを妻に説明した。

「社会保険労務士。なにそれ、聞いたこともないわ」

がっかりした。年金問題が社会問題化した時に年金の専門家としてテレビ等マスコミでコメントし、説明していた。妻は、テレビのワイドショウなど見ないのか。

「本当に知らないの。社会保険関係の業務をするだけでなくて、コンサル業務と苦情のあっせん業務もあって、企業年金の知識も役立てることもできるよ」

「そんな資格があるの、知らなかった。難しい資格なの」

「百人受験して、合格するのは五、六人かな」

「貴方には、無理ね。百人受けて九十九人受かるなら貴方でもいいかも」

私が資格試験にトライすることを完全にバカにしている。

「受験資格の要件はあると思うし、トライする資格としては社会的にも認められている」

「そんなことより、心臓がパンクするよ。定年後は呑気にやれば……」

「今後、高齢社会になり、国民の多くが今後の社会保険制度に不安を持ち、正確な情報に飢えてくることが予想される。そこで、社会保険労務士が活躍する」

「貴方は、充分、会社で活躍して、体までボロボロになって、まだ活躍するつもりなの」

「健康面の問題はあるが、定年後のことを考えると、長生きの不安も考えないと」

「長生きするつもりなの。その体で。定年後はゆっくりすれば。先生もストレスがないことが一番と言われたでしょう」

「定年後、呑気にゆっくりすることに抵抗があるな」「分かるわよ。今まで家庭を顧みずの会社人間、頑固一徹、言ったら最後、なかなか考えを変えない。最近は、ちょっと違うけど」

「定年後、目標もなく生きて行けると思うか」

「行けるわよ。目標って言ったって、子供たちが元気でいたらいいし、当面の目標は、厄介者を早く結婚させて、家から出すことね」

厄介者とは、次女のことで、呑気に人生を楽しんでおり妻の不安の一つである。

「俺も、家から出されないように頑張らなくちゃあいけないか」

「そうは言ってないわ。貴方の事じゃないわ。嫌ね」

呑気にしていると、俺まで出されかねない。「コワイ、コワイ」