また、翌日日系企業の30歳前後のミレニアル世代の中国の若者5~6人と上海繁華街の一角で歓談した。その中の一人で日本語を流暢に操る女子社員は、近々日本へ転勤することを大変楽しみにしているようだ。彼女の父親は外資系に勤務した経験があり、よく父親と議論するらしい。

現在の中国は監視社会で大変息苦しいこと、天安門事件における学生運動の武力弾圧、最近の香港の情勢なども的確に把握している。過去の毛沢東・鄧小平・趙紫陽、最近の習近平・李克強に対しても自分なりの人物批評や意見を持っているのには感心した。

ただし、日系企業に勤めているため世界の情報が得られやすいこと、開明的な父親としばしば議論していること、などがほかの一般的な中国の若者とは違うと見た方が良いかもしれない。

大隈重信・伊藤博文らによる明治維新政府が欧米の三権分立や普遍的な法治国家の価値観を受け入れ、日本を近代国家として発展させた功績は極めて大きい。

一方、鄧小平のように偉大ではあったが「経済の自由化だけを認め、政治は一党独裁を堅持」し、さらに習近平が「一党独裁を一層強力に推進」したことが今の中国の世界における最大の懸念である。

そこまで踏み切って彼らと議論するのは、私にも荷が重いので、最後はアニメ映画『君の名は。』や「秋葉原」の話題で盛り上がった会合であった。

中国の清華大学に留学したある日本人は、「朝の7時には図書館の席は座れないほど埋まり、食事中でも世の中の課題について熱心に議論している。国際競争というのは、こんな人達が相手なんだ!」と驚きの感想を述べている。

また、中国のある大学では日曜日に開館していた図書館を閉鎖したとの新聞記事が出ていた。平日はもちろん、日曜日の夜遅くまで図書館で勉強や読書に専念するため、健康を害する学生が続出したことがその理由らしい。

一方、日本の大学の図書館(文献資料室)は、いつ行っても閑散としている。17時過ぎは、どこを見回しても人影がなく、やや身の危険すら感じるほどである。いわんや国立国会図書館で資料調査するなど、夢のまた夢であろう。

学生の勉学場所は、おしゃべりができて気楽に過ごせる食堂や学生ラウンジである。試験の前になると学生で一杯になり、勉学環境は一変する。読書よりも、友達との雑談、携帯端末に費やす時間が圧倒的に多い。

中国人学生の海外留学生は2006年頃までは11万人/年ほどであったが、2007年頃から急上昇し、2018年では70万人近くに達し、現在でも同じ割合で上昇中である。また、中国の経済成長を背景に中国への帰国者が徐々に増え、2018年では50万人となっている。

2018年末までに432万人が留学を終え、そのうち84.5%に当たる365万人が「海亀」として帰国し、中国のイノベーションを牽引している。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。