Ⅲ.中等度認知症:10〜15点程度

物忘れはひどく、置き忘れた物を誰かが盗ったという「物盗られ妄想」が出る。そこにいない人が見えたり、声が聞こえる、と言う。理解力・判断力が低下し、季節に合った服を選ぶことができない。場所もわからなくなり、徘徊したり近所で迷子になったりする。入浴を嫌がったり適切にできていないが、本人はできていると言い張る。時に尿失禁、便失禁が見られる。

アドバイス:家族の介護の負担が重くなってきているので、デイサービスを増やしたり、お泊まりのショートステイを利用したりする。ケアマネージャーに相談して施設の見学をしたり費用などの情報を集めて、施設入居の準備をする。

Ⅳ.高度認知症:数点程度(10点未満)

理解力が著しく低下しており、人の見分けがつかなかったり、意思の疎通が困難になってくる。尿便失禁が見られ、ほぼ寝たきりのこともある。車いすや寝たきりの場合には、施設に入居されていることも多い。食事、移動、排泄などの日常生活動作全般に介護が必要。

アドバイス:介護の負担がかなり重く、施設入居が適切だと思われる。(デイサービスとショートステイをフルに使って自宅でケアしている場合もある)

認知症の最終段階では、自力歩行ができなくなり、車いすや寝たきりとなります。廃用症候群と言って使用しない手足の筋力が落ち、次第に動かすのが困難になってきます。高齢と認知症の進行で嚥下(えんげ)困難をきたし、誤嚥性肺炎を繰り返すこともあります。

身体的な疾患で亡くなる方も多いですが、認知症だけが進行する場合には、語彙がなくなってしゃべれなくなり、自力で動けなくなり、飲み食いもできなくなり、最終的には死に至ります。

食事や水分摂取が十分にできなくなったり、誤嚥を繰り返すような状態になると、施設側やかかりつけ医から胃ろうなどの延命治療の希望につき確認されます。キーパーソンである方が確信を持って希望を伝えられるように、認知症が進行する前に本人に希望を確認することが重要です。

また、亡くなった後に、認知症が進行して亡くなったということよりも、その人本来の人柄や好きだった事柄、その人との思い出などを大事にしてあげてほしいと思います。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。