苦悩、そして自首

公務員の友は見抜いていた。「この質問状、新聞社では掲載できないよ。これは恐ろしい」と言った。だが、阿智村の議員にはわからなかった。

そこから数日苦しんだ。家族には悟られないようにしてきたが……。

「どこに行くの?」息子が聞く。

「北へ行くか。飯田インターから高速で」

息子は訝(いぶか)しんでいた。静かな空気の車内。

「この駒ケ根の日産はお父さんが設計したのだよ」

相づちはあったかもしれないが、着いたところは、遠く離れた正義の館。

「ここで待ち合わせしている。1時間くらいはかかるかもしれないが、どこかへ行ってきてもいいよ。済んだら電話入れるから」

用事は済んだ。館から出て車を見た。同じ場所に停まっている。時計を見た。昼は過ぎていた。

「なんだ、どっかに行ってこなかったのか」

「うん、寝不足だったから」

「お昼、過ぎちゃったなあ、何か食べに行くか」

「お父さん、美味いソースかつ丼の店、知っているから行こう、おごるから。そこ一番美味しいよ。いつも混んでいるけど、この時間なら空いているかもしれない」

ソースカツ丼が好物の私がはじめて行く店だった。美味しかった。その日、初めて息子の前で涙を見せた。そのとき、息子はすべてわかっていた。

「悪いことをした人が悪いのだから、警察は悪いことをした村長を捕まえればいいじゃん。なんでお父さんが……」

その日の夕食、食卓を囲んでそう言われたとき、何も言えなかった。

「村長だって、ツネオって人だって、そんなことは当たり前じゃない。そっちも捕まえてお父さんも捕まえるならわかるけど」

妻が言う。

「でも、その人にも奥さんや子供さんがいるでしょ。お父さんがやったことは議会でも誰にもわかってもらえない」

何も言えなくなった。私は自分勝手なのか。

残された解決はこれしかないと決心したが、そこからが大変となった。