急いだ理由がもう一つある。私はパソコン音痴。パソコンを信用してもいない。どうにかワードは出来るもののUSBの使い方も知らない。パソコンの調子もとても悪い。

大体において我が家のパソコンの調子が良いことなど未だかつて一度もない。「サクサク」動いてなんかくれない。「なんでテレビみたいに簡単につかないのよ」といつもイライラする。何度買い替えてもいつも似たようなものだ。

だから電源を入れる時はいつも祈るような気持ちで「今度は一発でついてね。変な警告ランプとか意味不明な画面出てこないでね。ていうか、まず画面真っ暗なままでカーソル出てこないとかやめてね」と、話しかけながら操作している。

娘に「ママがせっかちだから悪いんだよ。クリック何度もしちゃだめだってば」と言われるが、反応が悪いパソコンがおかしいのだ。

でもそこは言っても仕方がないので、とにかくなるだけ短気を起こさずご機嫌を取りながら、毎日ワードにカタカタ打ち込み続けた。そしてUSB2個にコピーしても信用できない私は紙に印刷し、自分のスマホに原稿を送り、3重4重の保険を掛けながら一心不乱書く作業に没頭した。

一気呵成に書きまくることで「猪突猛進の自分またやらかしたかな……」という後悔や不安を頭から振り払っていた。「いやいや、これは私にとって千載一遇のチャンスなのだ」と独り言ちながら。自分の本を手にする瞬間を夢想しながら。

千載一遇せんざいいちぐう 千年間の長い間でたった一回会えるような好機のこと。絶好のチャンス

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『ママ、遺書かきました』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。