全国で行われていた住宅建材見本市、通称「ドテ市」。そこで私たちは「ドテ市シスターズ」と呼ばれていた。3人1チーム、チアガール姿で派手なポンポンを手に、だだっ広い会場を走り回る。各コーナーの前ではマイクで商品説明。ご成約が決まると太鼓と笛に合わせて踊りを披露する。

おまけに、お客さんのおじ様達を囲んで一緒にハイポーズ。ポラロイドカメラでの写真撮影会。なんだかハチャメチャでヤバ目なバイトだが、やってる時は楽しくて仕方なかった。あちこちの会場を新幹線や飛行機で移動してはホテルに泊まり、地方の料理に舌鼓。

秋田の「しょっつる鍋」。雪深い冬の青森の「かっぱ温泉」。マクドナルド友達のユリちゃんも一緒だし、まさに修学旅行のノリだった。名古屋城横のシティーホテルでは余興のカジノに呼ばれ、バニーガール姿でルーレット回しに初挑戦。若い時にしか出来ないやったもん勝ちの美味しいバイト。若かりし日の懐かしい思い出だ。

経験は、している最中と、後に思い起こす時とで二度おいしいもの。その時しかできないことは躊躇なくやった方が良い。結婚後もバイト遍歴は続き、ケンタッキーのドライブスルー、ケーキ工場での流れ作業、家では英語教室、パン教室。ベビーシッターに家事代行、現職のリカーショップ店員。この15年転職を繰り返してきた。

思いつくまま手あたり次第、なんの脈絡も節操もあったもんじゃないが、そこがバイトの醍醐味だ。それぞれの職場、仕事には、やってみて初めて分かる面白さと大変さがある。

昔、教育テレビで『はたらくおじさん』という番組があって好きだった。いろんなプロがいる。いろんな仕事があって社会はなりたっている。職業に貴賎なし。趣味と実益と勉強を兼ねた一石三鳥のお楽しみ。やっぱりバイトは止められない。

紆余曲折(うよきょくせつ 遠回りで曲がりくねっている。込み入った事情ですんなり解決しないこと

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『ママ、遺書かきました』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。