レイノー現象

僕は買ってもらった自転車を漕ぐ。雪が降っていた。息は白くとても寒い。横浜市西区にある浅間町の辺りを過ぎた頃、僕は自転車を止め、立ち止まった。握ったブレーキはアルミ製でヒンヤリする感触があるが、それ以上に氷に指を突っ込んだような痛みとも何とも言えぬ感覚を指先から感じた。

見ると人差し指に血の気はなく真っ白になっていた。変色していると言ってもいいかもしれない。

「何だこりゃ。痛いなぁ。霜焼けかな?」

深く考えなかったが、この指の症状は初めてではなかった。指が白くなるとやたらと痛かったので、親にも何度か言ったことがあるが「何だろうね?」くらいで終わっていた。後に驚きの事実になることを知らずに……。

この指先が鋭く痛み真っ白になる状態をレイノー現象と言い、これもSLEの診断基準となる一つだ。

習い事

余談だけど、僕は剣道をしていた。小学校1年生から発病する4年生の1月まで。最終的に腕前は3級、短剣道4級、銃剣道3級だった。剣道は父親がやっていたし、マンションのなかで仲良く遊んでいた同級生3人は知らない間に見覚えのある講堂に連れて行かれ、竹刀を持たされ、何にもわからず素振りして、なんやかんやあっという間に入部した。

道場の師範は厳しいお師匠さんで、いつも練習のときはボコボコと竹刀で叩かれた。礼儀に厳しく1時間正座もざらで、さらに練習後はお説教もあった。練習でちょっと怠けると突き飛ばされたことなんてしょっちゅうで、かなり鍛えられた。

でも、僕は根がヘッポコなので、「お腹が痛い」とか何だかんだ言って逃れようとする。もちろんお師匠さんにはお見通しで、なかなか帰してはくれなかった。子どもの嘘なんか見破るのは簡単なのだろう。

いまならパワハラなんて言って大問題になるだろうが、当時は当たり前のようにあった。罵声と叱咤と竹刀の愛の鞭。ついでに剣道は肉体的な環境も過酷で、真冬でも草履に素足。夏は夏で防具のなかはサウナみたいになり暑苦しさこの上ない。

そして、夏休みも冬休みも土日は特別に外で練習。わざわざ三ツ沢グラウンドの駐車場を借りてまで寒稽古なんかしてたなあ。根性はなかったけれど礼儀はある程度身についたと思う。それは感謝している。