生活が安定するまでに私の場合は5年くらいかかったが、他の人はもっと早く安定するのかもしれない。しかし、私が苦しんだ5年という過程は士業の独立にかかわらず、事業を始める人は避けては通れない道だと思う。

だからこそ、自分だけが特別だったわけではなく、ただ開業や事業を始める人の参考になればと思い、先んじて開業した者として経験を伝えた。決して自身の経験を自慢したいというものではなく、逆にすべてを曝け出すことによって恥ずかしい話をしているのではないかとも葛藤したが、悪い意味には取らないでほしい。

社労士の試験の合格率は、国家試験の中でも近年では、難関と呼ばれる6%前後である。その試験に合格することは大変であっただろうが、試験に合格することはただのスタート地点に立ったにすぎない。

開業をして、一定の事業を継続していくための収益の確保までの大変さとは比べものにならない。開業をすることは営業・主たる社労士業・会計などを1人ですべて行うことになるからである。

毎年多くの社労士が開業している。これまでの経験を活かして開業する者、夢を見て開業する者、資格取得したために開業する者、お金を稼ぎたいと開業する者、どんなきっかけでもいいと思う。開業を行うことによって、夢のある生涯プランを形成することはできる。

しかし、現実はそう甘くはないものである。顧問契約を受託できなければ、仕事は無く、次の仕事につながることもないのである。すなわち顧問契約を結ぶには営業が必須であり、営業無くして顧問契約は無い。仮に営業を行わずに顧問先を確保している社労士がいたとすれば、ご教示いただきたいものである。

開業することの厳しさは、開業した後に嫌というほど知ることになる。開業前や開業の瞬間に思う厳しさとは異なり、また試験に合格するための厳しさとは比べものにならない。

それは、「お金」が伴うからである。貯金などのお金が潤沢にあったり、親が支援してくれたり、年金受給しながらの開業であった場合は別であるが、それでもお金は出ていくばかりで長くは続かない。必ずお金には入りと出があるのである。