「めっちゃこえ~よ! 私が髪染めたら丸坊主にするらしい」

「こわっ!!」

最初は緊張したが、慣れてくるとめちゃくちゃ優しいママだった。一緒に買い物に行き、スーパーで試食のウインナーを食べたり、家ではみんなでお菓子を食べながらゲラゲラ笑ったり、楽しくてたまらなかった。

「私、風子のこと好きよ」

まきのお母さんは、なぜか私を好きでいてくれた。私も大好きだった。まきとは今でも家族ぐるみで仲良しだ。先日まきの家に20年ぶりに行くと、まきのお母さんもいた。

「いらっしゃーい!」

あの時と何も変わらない。私が好きなママのままでいてくれた。また遊びに行こう。

家に帰ると現実が待ち受けている。ほっとひといき、居間に座ろうとすると、今まで誰と何をしていたの、週末は掃除をするから遊びに行くのはだめ、テレビはうるさいからつけないで……。

なんで私の家とまきの家はこんなに違うんだろう、と自分の置かれた家庭環境を恨み始めた。離婚後に私たちが引っ越したマンションの部屋は2部屋しかなく、1つが食事や勉強をする部屋、もう1つが寝る部屋だった。つまり常に4人一緒にいる。

母は過干渉であり、朝から晩まで監視される生活だ。朝起きて、顔の洗い方が悪い、鼻のかみ方がへたくそ。宿題をすれば消しゴムの使い方が悪い。唯一、1人でゆっくりできるはずの風呂でシャワーの水を使いすぎだ、と扉をたたかれる。

家に友達を連れてきても、友達まで怒る始末。自分は何時間も長電話するくせに、私がたった数十分電話で友達と話していると、

「長すぎ! 急ぎの電話があったらどうするんね」

電話の相手に聞こえるくらいの大きな声でしかるので、「あ、ごめんね。もう切るね」と、友達も気を遣って電話が終わる。

「お母さんだって長電話するやん」

電話を切った後、私は言った。

「お母さんは電話代払ってる。あんたはまだ未成年。親の管理下にあるんだから、自由にはできないの」この「あんたはまだ未成年」、「親の管理下」、という言葉が母の口癖だった。当然嫌気がさしてくる。早く大人になって自由になりたい。家を出たい。そう思うことが増えた。