2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

2 保育原理

保育園が足りない 建設めぐり住民と事業者が対立

Yahoo!ニュース編集部 二〇一五年一二月二五日

(前略)

「事故が起きたらどう責任を取るんだ!」
「そんな説明ではまったく納得ができない!」
「工事を一旦中止して話し合いをすべきだ」

住民たちがまくし立てる。保育園の建設をめぐって近隣住民の呼びかけに応じて、開かれた説明会で、事業者、自治体の担当者に向けて投げかけられた言葉だ。

東京都中野区若宮町、ここで保育園の新設をめぐって住民と事業者が激しく対立している。住民と保育園・中野区はたびたび話し合いの場を設けてきたが、お互い主張は平行線をたどっている。渦中の保育園は、2016年4月に開園予定の「まなびの森保育園鷺ノ宮(仮称)」、地上2階建てで定員は60人だ。

現在は開園準備へ向けた工事が進むが、住民から反対の声が上がっている。「別にうちは反対しているわけでもないんですけど、やり方が腹立つ」と語る住民もいる。なぜここまでこじれてしまったのか。

真っ向から対立する住民と保育園

発端は9月に遡る。事業者が着工し始めたところ、住民が建設計画の説明不足などを理由に建設反対の声が上がり始めた。建設計画は中野区のホームページで6月末に公表されていたが、住民に対して回覧板や説明会などを通じての周知はなかった。

事業者によれば「着工直前、隣接の数軒に挨拶しただけ」だという。中野区の募集要項には「近隣住民への配慮」としか記されておらず、説明会開催の義務はない。

「まずは建設計画の見直しをすべく、工事をストップさせるべき」と主張する住民たち。反対の理由は主に2つある。計画では駐輪場が5、6台分しかない。駐輪できない保護者が送迎時に子どもを路上で乗り降りさせ、朝夕の送迎の時間帯に交通事故が起きることを住民たちは危惧している。

建設予定地の前の道路は幅4メートル程度しかない。そのうえ、この路地は大通りへの抜け道として頻繁に利用されており、かなり交通量が多い。

もう一つの争点が砂場の設置だ。現在の計画では屋上に設置される予定だが、住民は砂が隣接する住宅に飛散することを懸念している。ここでも「向きを変える」という事業者と「向きを変えても意味が無い」という住民が真っ向から対立した。

事業者側は「開園時期は遅らせられない」「設計の変更は難しい」と主張するのみ。住民側はその後「今後、地域と保育園が共存共栄していけるのかどうか、地域住民が一番詳しく知っている交通事情等を無視した設計のままで、子ども達の安全が守られるのかどうか、大きな不安を禁じえません」と声明を発表している。

どのような落としところを探ればいいのだろうか。中野区の担当者に行政の責任を聞くと「(まなびの森保育園は)基本的に民設民営ですので、民間のマンションを民間事業者が建てるのと同様で、区が住民の賛成、反対に関して行司役を担うなどということは好ましくありません。こと保育所の整備や運営については、事業者の判断に任せるということです」と答えるにとどまった。

だが、こうした中野区の態度も住民の感情に油を注ぐ。住民の中のひとりは「中野区も事業者に補助金を出している。“我関せず”では通用しない」と語気を荒らげる。(後略)
 

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。