IPCCの1.5度特別報告書

2018年10月、IPCCは1.5度特別報告書を発表し、パリ協定の2度未満の目標を1.5度未満の目標へと、より厳しくすべきだという意見を発表しました。

パリ協定は、1.5度目標の方が2度目標より多くの点において、温暖化による被害を少なくできることが定量的に示されたからとしています。

産業革命以来の人為的な活動による平均気温の上昇は、2017年時点ですでに約1度となっており、現在の度合いで温暖化が進行すれば、2030~52年の間に1.5度に達する可能性が高いとしています。

また、産業革命以前から現在までに人為的に排出された温室効果ガスによる温暖化は、数百年から数千年にわたって持続するとし、これに起因する変化(海面上昇など)が長期的に続くことを、高い確信度で示しています。

そういう中で、気温上昇を1.5度に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比約45%削減、2050年前後には正味ゼロに達する必要があるとしています。

2度上昇のケースでも、2030年までに約20%削減、2075年前後に正味ゼロにする必要があると予測しています。

そして、1.5度を大きく超えないモデル排出経路では、エネルギー、土地、都市、交通と建物を含むインフラや産業システムでの急速かつ広範囲に及ぶ低炭素化・脱炭素化への移行が必要になるとしています。

そして国際協力は、すべての国、すべての人に対し、気候行動の能力を強化する環境を提供することができるとし、開発途上国と脆弱な地域にとって、非常に重要な成功要因であると強調しています。

このようにIPCCも2度未満の目標から、1.5度未満の目標にシフトしてきていますが、現在、各国が申告している排出量削減目標では2度未満の目標さえ、遠く及ばないといわれており、はたして、このパリ協定のアプローチで地球温暖化が防止できるのか疑問を持たざるを得ません。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『「グローバル・サンシャイン計画」で防ぐ劇症型地球温暖化』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。